迎えた面会当日、姿を見せた受刑者は車いすの状態で、言葉もうまく発せない様子で、問いかけに「はい」と「いいえ」で答えるのが精いっぱいだったという。それでも90歳を過ぎた受刑者に「世の中の高齢者や、その家族に伝えたいことがありますか」と言ったら、ただ1つ自分の言葉で話したことがある、「免許を早めに返納するように、世の中の方へ伝えてください」と述べたという。松永さんは「この彼の言葉はしっかりと世の中に伝えようと思った」「高齢者の方々をどうサポートするのかということも国や自治体が考えるきっかけになる彼の言葉であってほしい」と話していた。迷いながらも面会に臨んだ父親はどうしても受刑者に伝えたいことがあり、「娘と孫のことを忘れないでください」ということをはっきり言ったという。面会は40分に及んだ。父親は最後に、自然と受刑者に声をかけていたという。松永さんは「被害者と加害者の立場を乗り越えて対話したことに、すごくメリットを感じた」と話していた。松永さんが受刑者と会うきっかけとなった心情等伝達制度、去年12月に始まった。法務省によると、半年間で59件の申し込みが受理されたという。加害者と被害者遺族が対話することについて、松永さんは「反省や更生を感じられず、逆につらい思いをする人も当然いると思う」とも話していた。