家族小説「桜が散っても」を紹介。物語は桑畑村で主人公の山川忠彦が亡くなっているのが発見されたところから始まる。手には巾着袋。30年ほど遡り、彼の人生が描かれていく。忠彦は大手建設会社に勤務し、妊娠中の妻・麻美と息子と暮らしていた。趣味を楽しむため桑畑村に通っていたある日、村の友人から忠彦の会社が村に地すべりの危険性も顧みず大規模レジャー施設を建設しようとしているという連絡が。独自にその危険性について調査する中で、ある日、忠彦の眼の前で山崩れが起こり忠彦はショックのあまり失声症となってしまう。会社を辞め、自分を責めて桑畑村で桜の植樹を始める忠彦。やがて離婚。ひとり桑畑村に移り住むのだった。森沢さんは「家族って個々の尊重すべき人間。同じ不幸に見舞われても受け止め方が違った場合はうまくいかなくなる。どう幸福論を混ぜて最終的に落ち着くのかを書いた」と話す。女手一つで2人の子どもを育てた麻美。社会人となった息子、娘の目線から忠彦について語られていく。時を超えた父からのメッセージに感動が広がる家族小説。