横浜市のベッドタウン・妙蓮寺駅沿線で地域密着で60年続く工務店がある。住宅建設や不動産仲介を手がける店の3代目・酒井洋輔の一日に密着する中なのだが酒井が訪れたのは建設現場ではなく畑。耕作放棄地だった土地を地域の人が農作業で交流する場所として酒井が再生させた。こちらは地元のそば店で昼ごはんかと思いきや本当の目的はお店の取材。酒井は地域でいちオシの飲食店などの情報を発信するウェブサイトも運営。実は家づくりだけじゃなくてまちづくりで活躍する妙蓮寺のスターなのだ。酒井が家業を継いだのは6年前、当時から「街が魅力的でなければ家を建てたいと思う人もいないのではないか」と考えていた。工務店がまちづくりに乗り出したきっかけだと話す。彼が手掛けたプロジェクトは駐車場の空きスペースを活用したキッチンカーの誘致、古民家を改装したシェアオフィスなどこの5年で、20を超えている。街で70年以上続いてきた書店も酒井が再生させたお店の1つ。全国各地の街で書店が姿を消して行く中、このお店も窮地に立たされていた。店主の石堂智之とは幼なじみの酒井が提案したのは店を改装するのではなく雰囲気を残しながら扱う本を変えるということだった。あえて売れ筋の本にはこだわらずこの店のスタッフたちが厳選した本だけを並べるセレクトショップにした。その結果、雑誌で特集が組まれるなど全国からお客さんが訪れる店に再生した。こうした活動を通じて酒井の知名度も少しずつ広がっていきて今ではすっかり街の御用聞きのような存在になっている。妙蓮寺で生まれ育った姉妹は酒井に物件を紹介してもらうなどして去年、立ち飲みバーを開いた。酒井のまちづくりは新たに移り住んだ人たちにも浸透している。住宅地の一角に作った畑では近くに引っ越してきた女性が地域のみんなと野菜を育てている。