イギリスのEU離脱投票から10年。イギリスはEU前身組織への加盟以降、50年近く様々なメリットを受けてきた。一方、EUに加盟していることで主に東ヨーロッパ諸国などからの労働者の流入が加速し、移民問題への懸念が高まったことを背景に2016年にEU離脱を問う国民投票が行われた。近年、離脱による弊害を感じる国民が増えて、今年の世論調査では離脱への投票が間違いだったと答えた人が57%。離脱支持をしたヘイスティングスの漁業者を取材すると、離脱が期待外れだったという漁師が少なくない。ヘイスティングスは離脱に投票した人は約55%。ブリクサムは国内有数の魚市場で、40種類以上の魚介類が水揚げされる。水揚げされた魚の約7割は高値で取り引きされるEU各国に輸出される。新たな通関手続きには検疫の書類が必要になり、EU諸国への煩雑な輸出手続きが大幅に増える。漁師のローレンス・ギルソンさんは10年前、EU離脱に投票した。離脱でEU各国の漁船の操業を抑制し、イギリスの海を取り戻せると期待していた。イギリスの海域ではEU各国の漁船が操業していて、漁師たちはイギリスの魚がほかの国とられているという不満が長くあった。漁業者たちは、「EUに管理されている」「漁業の主権を取り戻す」と漁業者に離脱支持を訴えた。しかし、EU離脱の漁獲交渉で当時の漁獲枠の一部を取り戻したものの、EU漁船の操業は継続されることになり、ローレンスさんはこうなると分かっていればそうしなかったと話す。失望を決定づける出来事は去年起きた。労働党政権は輸出の煩雑な手続きを簡素化する協議を進めることで合意し、EU加盟国の漁船の操業が2038年まで12年延長して認められることに。地元の漁業団体は、漁師の高齢化・後継者不足が深刻化するなか、漁業の存続そのものが危うくなると考えている。今後の協議では、単一市場に復帰するかどうか難しい判断が迫られる。なり手不足も深刻で、約10年前に30隻以上だった舟は、現在は半分以下になっている。EU離脱の影響は漁業以外にも出ている。一方、通商交渉が可能になったことなど、一定数は主権を取り戻せたと思っていて、再びEUのルールに縛られたくないという声も聞かれる。
