仙台局から東北の伝統芸能について伝える。先月、大阪・関西万博の会場で東北絆まつりが開かれた。青森ねぶた祭りや仙台七夕まつりなど東北6県の祭りが勢揃いした。ステージではもう1つ宮城の伝統芸能、気仙沼市沿岸部の波板地区に伝わる「浪板虎舞」が披露された。震災を乗り越えて披露した伝統の舞には住民たちの特別な思いがあった。5月、地区では連日、出演する住民たちが連日、練習に励んでいた。「浪板虎舞」は1970年の大阪万博でも披露されていた。そのときに「虎バカシ」として虎の先導役を務めていたのが最年長の指導役の小野寺優一さんだった。優一さんは55年ぶりの万博の舞台で世界に伝えたい思いがあるという。それは震災で受けた支援への感謝の気持だった。波板地区は2011年の震災の津波で大きな被害を受け、優一さんをはじめ半分以上の住民が自宅を流され、約30人が犠牲となった。震災から2か月後、アメリカから届いた励ましのメッセージに対するお礼として震災後、初めて住民たちは虎舞を舞った。それ以降、地区の祭りなどで舞い続けてきた住民たち。虎舞は復興に向かう心の支えになった。今回、大阪・関西万博で「虎バカシ」を務めた小野寺厚也さんは震災で母親を亡くしていた。