25年にわたってファンドを運用してきた清原達郎さん。2005年には長者番付で全国トップになったこともあり“伝説の投資家”とも呼ばれている。去年引退し、今年、みずからの投資経験などをまとめた著書を出版して話題となっている。清原さんが、テレビメディアのインタビューに初めて応じた。清原さんは咽頭がんの手術の影響で声が出せないため、タイピングで答えてもらった。テレビ取材を受けた理由について「SNSの詐欺に気をつけてくださいと訴えたいからです。本が売れ出してからSNS上で私を名乗るサイトが100以上立ち上がりました。私はSNSを一切やりませんし未公開株や暗号資産(仮想通貨)を勧めることもありません」。清原さんのファンドでは25年間、日本株に投資をしてきた。最終的な運用パフォーマンスは9341%。最初に100万円投資していれば、9341万円になっている計算。しかし、そこに至るまでの道のりは、決して平たんではなかった。著書では、リーマンショックのあとに、自分の全財産をファンドにつぎ込むなどして危機を乗り越えてきたことを綴っている。清原さんがファンドを運用していた期間は、日本の失われた30年と重なる。「私は『失われた30年』だとは思っていませんし、何が失われたのか私には分かりません。1980年代の大きな過ちから時間をかけて、日本はまともになってきたというのが私の感想です。今は企業のガバナンスが180度変わりました。企業の統合が進み、むだな設備投資もなくなり、今では増配、自社株買いが当たり前の世の中になりました」。清原さんが投資先を決めるうえで大事にしてきたのは、社長に直接会うことだという。「社長に会うというのは小型株の話です。小型株は人的なリソースに乏しく社長が頼りです。社長のガッツと能力で会社の成長株が決まります。私は社長に会ったとき必ず『ことしの入社式のとき何を話されましたか?』と聞くようにしていました。新入社員は中小企業にとって宝物です。『忘れた』とかいうのは論外です」。日本経済は今後、何を目指すべきなのかとの問いに「日本は人口減少局面に入っているので『GDP成長率』とかを目標にしないほうがいい。大事なのは『1人あたりGDP』です。1人あたりGDPを伸ばすためには付加価値の低い仕事をロボットに任せるか、IT技術で生産性を上げることが重要ですが、それは可能でしょう」と答えた。特集に言及。