濃さの違う3種の墨と高価な絹でせきた絹本という画面を使う。あらかじめ用意した下図の上に絹本を重ねた。つけた下図にしたがって、中濃度の墨と最も薄い墨で塗り分ける。その際に間に細い塗り残しを作り絵絹本来の明るさを際立たせる。次に水を含ませた筆で絵絹を湿らせて素早く筆を持ち替えて少し濃い墨をなじませるようにのせると繊細なグラデーションが生まれる。一村は一枚の葉で、この作業を3、4回を行っているという。最後は別の下図にかえて最も濃い墨で描いていく。濃さの違う墨による美しいグラデーションを讃えた枇榔の葉が完成した。にじみや筆跡のない写実的な墨の表現。一村は奄美に来てからも常に新しい絵画を求め様々な技法に挑み続けていた。