熊本県小国町。標高およそ1000mの山の中に突然現れた地熱発電所。開発したのは「町おこしエネルギー」で、去年3月運転を始めた。地熱発電は地下深くにある地熱貯留層から高温の熱水と蒸気をくみ上げ、蒸気によってタービンを回し発電する。24時間発電可能で燃料は不要。地球がボイラーの役割を果たす純国産のエネルギー。町おこしエネルギー・沼田昭二会長は、全国で1000以上の店舗を展開する業務スーパーの創業者。徹底したコストカットでスーパー事業を成長させた沼田さんは、およそ120億円の私財を投じてこの発電所を開発した。火山大国である日本の地熱資源量は世界3位だが、発電の導入量では10位。発電電力量に占める割合もおよそ0.3%にとどまる。大きな要因は開発にかかるコスト。調査から発電所の稼働までには一般的に10年以上の期間が必要で、事業としてのリスクが高い。沼田さんは地熱発電でもコストカットを追求した。自走式掘削機を自社開発。調査開始から約5年で発電所を稼働できるようになった。従来の地熱発電所は一から設計を行うのに対し、町おこしエネルギーでは1号機と同じ設計で2号機も開発する予定。小国町の他にも北海道函館市や鹿児島県湧水町で調査や掘削を進めている。沼田さんは自治体に法人税を納めるため現地法人も立ち上げた。従業員18人のうち10人が地元で雇用している。