今井さんは三重県から約1600km離れた沖縄県の竹富島を訪れた。空港がある石垣島を経由し、フェリーで約15分で到着した。住民約340人である。竹富島に来た理由は夏休みと修理の腕を磨くのに相応しい場所だからだという。宿泊する宿に事前に相談し、困っている島民を探してもらっていた。
3人姉弟が営む創業71年の高那旅館で、客室の掃除に使っていた掃除機を修理し始めた。島だと部品が簡単に入手できない。予備で持っていた自らの修理道具のプラグを切り取り、掃除機に付け替えて直した。3人はさらに約20年前に製造されたVHSデッキの修理も頼んだ。点検するとデッキ自体は正常に動いているが、映像が映らない。デッキ内部にテープのカビが付着していたのが原因だという。手作業でデッキやテープのカビを取り除くと、映像が映った。3人はビデオに映った亡き両親の姿が見たかったという。両親は旅館を始め竹富島に観光客が多く訪れるきっかけを作った人だという。
今回の今井さんの修理はボランティアで、趣味の釣りや観光を満喫するついでだという。島に来て修理をする理由について、普段と違う修理を体験できることが職人魂に火がつくという。68歳の男性の依頼は30年愛用してきたCDデッキで、故障の原因は潮風による内部のサビとみられる。CDを入れても音楽が流れない。今井さんはモーターに異常があると睨み、モーターのサビを落としスプレーなどでクリーニングするなど、1日がかりの作業で修理が終わった。
今井さんは修理の合間に南の島を満喫していた。この日島民の集会所からSOSが入った。竹富島では神前に奉納する踊りが受け継がれており、今回はその練習に使っているCDラジカセの修理依頼だった。完璧な修理には日数がかかるとみられた。今井さんは急きょ東京の番組スタッフにジャンクヒンのラジカセを竹富島に届けるよう依頼した。ジャンク品から基盤を取り出し、丸ごと移植した。その日の夜の練習には今井さんが直したCDラジカセが活躍した。滞在した7日間で10台中8台の修理に成功した。