今回はヤン−ミルズ理論と質量ギャップ問題「任意のコンパクトで単純なゲージ群Gに対して非自明な量子ヤン-ミルズ理論がR4上に存在し質量ギャップを持つことを証明せよ」。ヤン-ミルズ理論は数学者ではなく物理学者が作り出した素粒子に関する理論。素粒子とは原子を分解した電子のようにこれ以上分解できないもの。物理学者が作り出したヤン-ミルズ理論とは?そもそも物理学者は何を目指しているのか?
物理学者たちは今から100年程前までに電子・陽子・中性子の発見を成し遂げた。電子は1897年にジョセフ・ジョン・トムソンが、原子核は1911年に陽子は1919年にアーネスト・ラザフォードが、中性子は1932年にジェームズ・チャドウィックが発見した。しかし「電子はどのような力で原子核に引きつけられているのか?」、「陽子や中性子はどのような力で結びつき原子核を作っているのか?」という2つの謎が残っていた。これを解決するため物理学者たちは実験や観察結果を数式で表現。1940年代に物理学者たちは量子電磁気学と呼ばれる精密な理論にたどり着いた。「電子はどのような力で原子核に引きつけられているのか?」を説明するもの。量子電磁気学を使った計算結果は実験と驚異的に一致するほど正確だった。
数学と物理学はまったく違う。物理学は実験や観察で自然現象を調べて理論を作るが、数学は公理を定めて理論を組み立てていく。公理は自然現象と全く関係なくてもよく、常識と相容れなくても構わない。物理学の残った謎「陽子や中性子はどのような力で結びつき原子核を作っているのか?」の解明に挑んだチェンニン・ヤン博士。ロバート・ミルズ博士と共に“ヤン-ミルズ理論”にたどり着いた。陽子と中性子を結びつけるのは、その間を複雑に行き来する3種類のb粒子と呼ばれる素粒子で、b粒子のやりとりの結果陽子と中性子は変化したりすることまで予言していた。ヤン-ミルズ理論は多くの物理学者に「正しいに違いない」と思わせるものだった。しかし、その後ヤン-ミルズ理論は物理学界の大御所に猛烈に批判された。問題となったのはヤン-ミルズ理論ではb粒子の質量がゼロになってしまうことだった。ヤン-ミルズ理論は捨て去られたが、その後大復活を遂げることになる。
1960年代、陽子や中性子がクォークと呼ばれるより根源的な素粒子からできているらしいことが様々な実験によって明らかになってきた。これまで知られていた力では、距離が遠くなれば弱くなるのが常識だった。しかし、クォーク同士に働く力は距離が遠くなっても弱くならず、距離が近いほど弱くなることがわかってきた。陽子や中性子からクォークを取り出せないという性質“クォークの閉じ込め”と呼ばれる現象を引き起こしていると考えられるようになった。そして新たな謎「クォーク同士を結びつけている力の理論とは?」が生まれた。1970年代、ヤン-ミルズ理論を使って計算してみると距離が近いほど弱くなる力が現れる事がわかった。陽子や中性子の間の力の理論として生み出されたヤン-ミルズ理論は、クォーク同士に働く力の理論だった。さらに1980年代、ヤン-ミルズ理論は素粒子に働く他の力をも説明できることが確認され、現代物理学の基礎を支える最重要理論として称えられるようになった。
なぜ数学者はヤン-ミルズ理論をミレニアム賞問題にあげているのか。数学者から見ると物理学者が使っている新たな数学はありえない代物なのだという。ヤン-ミルズ理論をミレニアム賞問題に選定した1人であるエドワード・ウィッテン博士が問題としているのは、物理学者が発明した経路積分と呼ばれる新たな数学。数学者から見ると経路積分はあいまいすぎて意味をなさないため根本から考え直す必要があるという。ヤン-ミルズ理論と質量ギャップ問題は、数学的に厳密なものに生まれ変わらせ「クォークの閉じ込め」きちんと示せということを意味している。
ヤン−ミルズ理論がミレニアム賞問題に選ばれたのにはポジティブな理由がある。ニュートンが作り出した微分・積分は素晴らしい理論と称賛される一方で激しい批判を浴びていた。その理由は微分・積分が当初「0であって 0でない」というあいまいでわけがわからない無限小量を用いている事実があったから。数学者たちが微分・積分を数学的に厳密なものに仕上げるためかかった時間は約200年。その苦労と引き換えに現代数学につながる様々な新しい概念が生まれたという歴史がある。同じようにヤン-ミルズ理論が厳密なものへ仕上げられる過程の中で未来につながる新しい数学が誕生するはずだとウィッテン博士たちは期待している。
物理学者たちは今から100年程前までに電子・陽子・中性子の発見を成し遂げた。電子は1897年にジョセフ・ジョン・トムソンが、原子核は1911年に陽子は1919年にアーネスト・ラザフォードが、中性子は1932年にジェームズ・チャドウィックが発見した。しかし「電子はどのような力で原子核に引きつけられているのか?」、「陽子や中性子はどのような力で結びつき原子核を作っているのか?」という2つの謎が残っていた。これを解決するため物理学者たちは実験や観察結果を数式で表現。1940年代に物理学者たちは量子電磁気学と呼ばれる精密な理論にたどり着いた。「電子はどのような力で原子核に引きつけられているのか?」を説明するもの。量子電磁気学を使った計算結果は実験と驚異的に一致するほど正確だった。
数学と物理学はまったく違う。物理学は実験や観察で自然現象を調べて理論を作るが、数学は公理を定めて理論を組み立てていく。公理は自然現象と全く関係なくてもよく、常識と相容れなくても構わない。物理学の残った謎「陽子や中性子はどのような力で結びつき原子核を作っているのか?」の解明に挑んだチェンニン・ヤン博士。ロバート・ミルズ博士と共に“ヤン-ミルズ理論”にたどり着いた。陽子と中性子を結びつけるのは、その間を複雑に行き来する3種類のb粒子と呼ばれる素粒子で、b粒子のやりとりの結果陽子と中性子は変化したりすることまで予言していた。ヤン-ミルズ理論は多くの物理学者に「正しいに違いない」と思わせるものだった。しかし、その後ヤン-ミルズ理論は物理学界の大御所に猛烈に批判された。問題となったのはヤン-ミルズ理論ではb粒子の質量がゼロになってしまうことだった。ヤン-ミルズ理論は捨て去られたが、その後大復活を遂げることになる。
1960年代、陽子や中性子がクォークと呼ばれるより根源的な素粒子からできているらしいことが様々な実験によって明らかになってきた。これまで知られていた力では、距離が遠くなれば弱くなるのが常識だった。しかし、クォーク同士に働く力は距離が遠くなっても弱くならず、距離が近いほど弱くなることがわかってきた。陽子や中性子からクォークを取り出せないという性質“クォークの閉じ込め”と呼ばれる現象を引き起こしていると考えられるようになった。そして新たな謎「クォーク同士を結びつけている力の理論とは?」が生まれた。1970年代、ヤン-ミルズ理論を使って計算してみると距離が近いほど弱くなる力が現れる事がわかった。陽子や中性子の間の力の理論として生み出されたヤン-ミルズ理論は、クォーク同士に働く力の理論だった。さらに1980年代、ヤン-ミルズ理論は素粒子に働く他の力をも説明できることが確認され、現代物理学の基礎を支える最重要理論として称えられるようになった。
なぜ数学者はヤン-ミルズ理論をミレニアム賞問題にあげているのか。数学者から見ると物理学者が使っている新たな数学はありえない代物なのだという。ヤン-ミルズ理論をミレニアム賞問題に選定した1人であるエドワード・ウィッテン博士が問題としているのは、物理学者が発明した経路積分と呼ばれる新たな数学。数学者から見ると経路積分はあいまいすぎて意味をなさないため根本から考え直す必要があるという。ヤン-ミルズ理論と質量ギャップ問題は、数学的に厳密なものに生まれ変わらせ「クォークの閉じ込め」きちんと示せということを意味している。
ヤン−ミルズ理論がミレニアム賞問題に選ばれたのにはポジティブな理由がある。ニュートンが作り出した微分・積分は素晴らしい理論と称賛される一方で激しい批判を浴びていた。その理由は微分・積分が当初「0であって 0でない」というあいまいでわけがわからない無限小量を用いている事実があったから。数学者たちが微分・積分を数学的に厳密なものに仕上げるためかかった時間は約200年。その苦労と引き換えに現代数学につながる様々な新しい概念が生まれたという歴史がある。同じようにヤン-ミルズ理論が厳密なものへ仕上げられる過程の中で未来につながる新しい数学が誕生するはずだとウィッテン博士たちは期待している。
