豚熱は「豚熱ウイルス」による豚の感染症で、ウイルスを持つ野生のイノシシから養豚場の豚に感染していると考えられている。ワクチンの接種のほか、野生動物が入り込まないよう養豚場に網や柵を設置するといった対策が行われているが、感染経路の特定は困難。こうした中、栃木県県央家畜保健衛生所の小笠原悠主任らの研究チームは、死んだ豚の近くで見つかることのあるクロバエ類という大型のハエが豚熱ウイルスを運ぶ可能性に着目し、感染したイノシシが見つかった場所でクロバエ類を捕獲してウイルスを持っているか調べた。その結果、捕獲されたうちのおよそ30%からウイルスが見つかり、遺伝子を解析したところ、感染したイノシシから検出されたウイルスと同じ株だったことが分かった。また、実験ではハエの体内で感染力のあるウイルスが24時間以上保持されることも分かり、研究チームは、野生のイノシシからウイルスを取り込んだハエが養豚場内に入って感染を広げる可能性があると指摘している。