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「賀建奎」 のテレビ露出情報

肉厚マダイは世界で初めて流通した動物性のゲノム編集食品。マダイの遺伝子を操作し、食べられる部分を通常の1.6倍にした。他にも成長速度が1.9倍のトラフグもある。これを可能にしたのが「クリスパー・キャスナイン(CRISPR-Cas9)」というゲノム編集技術。自然界で数万年かかる進化を数時間で人の手で狙い通りに起こすことができる驚異的な技術で、ノーベル化学賞も受賞した。人間への応用も含めて、その研究の裾野は広がり続けている。一方で、安全性や倫理的な問題への議論もある。
生物は無数の細胞1つ1つにDNAを含んでいる。DNAには生物の容姿・能力・性格などを決定する遺伝情報が刻まれている。その遺伝情報の総体をゲノムという。これを改変するのがゲノム編集。フランス人科学者のエマニュエル・シャルパンティエはある日、細胞の中に「トレイサーRNA」を発見した。細菌は常にウイルスから狙われている。ウイルスが侵入すると免疫システムが応戦する。キャスがウイルスのDNAのを切り刻み、クリスパーと呼ばれる保管庫にファイリングする。クリスパーRNAが保管庫の情報をもとに侵入したウイルスが敵かどうかを判定する。クリスパーRNAがキャスをウイルスのもとへ連れて行こうとする。しかしクリスパーRNAと2人きりの行動はキャス的にNG。そこで登場するのがトレイサーRNAで、キャスを説得し、ウイルスのもとへ同行する。キャスがウイルスを撃退する。エマニュエル・シャルパンティエの発見の前までは、キャスがどうやってウイルスのもとへ向かうのか分かっていなかった。この免疫システムに気づいた時、エマニュエル・シャルパンティエは「このシステムを人や動物に応用できるのでは?」と考えた。その後、エマニュエル・シャルパンティエはアメリカの構造生物学者ジェニファー・ダウドナと共同研究を開始し、わずか1年半で新しいゲノム編集技術の開発に成功した。さらに、クリスパーRNAとトレイサーRNAを一体化させたガイドRNAを作成し、より早く正確にゲノム編集ができるようになり、この技術は「CRISPR-Cas9」と名付けられた。これまで数年かけて行われていたゲノム編集が数週間でできるようになった。2020年にエマニュエル・シャルパンティエらはノーベル化学賞を受賞した。CRISPR-Cas9は医療や農業、エネルギー、食品などあらゆる分野で応用され始めている。安全性に関する議論もあるが、遺伝子組み換え食品のように外から遺伝子を組み込むのではなく、たくさんの遺伝子の中から狙った遺伝子だけに変異を起こすというもので、従来の品種改良より安全性が高い手法だと考えられる。しかし、ごくまれに狙った遺伝子意外を傷つけてしまうこともあり、消費者の知る権利を守る上で表示義務が必要という意見もある。
ゲノム編集への期待は高く、マラリア撲滅など感染症対策にも活用されている。遺伝子ドライブという技術を用いて、マラリアを媒介する蚊の性発達に関する遺伝子を改変して生殖能力の低い蚊を作る。通常、DNAは両親から半分ずつ受け継がれるため、変異は代を重ねるごとに薄まっていく。しかし遺伝子ドライブを使った技術では100%子孫に伝わっていくため、蚊を激減させることができる。さらに、ゲノム編集では生物を復活させることもできる。2021年9月、ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授らは、アジアゾウのDNAを書き換えてマンモスを復活させて北極のツンドラ地域に放つという計画を発表した。一方で、遺伝子ドライブやマンモスの復活計画には生態系への影響や倫理的な意味での批判の声もある。そんな中、ゲノム編集はがん細胞縮小など医療にも応用され始めている。また、遺伝子工作キットを使って一般の人が生物研究をするということも現実となっている。中国ではある科学者が人間の受精卵をゲノム編集し、エイズウイルスに感染しにくいように遺伝子を改変したデザイナーベイビーを誕生させた。世界中から非難が殺到し、不法な医療行為を理由に懲役3年の実刑判決が下った。今のところ、世界の共通認識は、たとえ治療目的でも受精卵など生殖細胞のゲノム編集は許されないとなっている。変異が子孫にも伝わる可能性や、差別や格差を生み出す可能性があることなどがその理由。

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