能登半島地震でおよそ1万棟の住宅が全半壊した輪島市。被害を拡大させた要因の一つが軟弱地盤だと指摘する専門家がいる。防災科学技術研究所・主任専門研究員の先名重樹さんは市内の82か所で地盤の揺れやすさを詳細に調査した。その結果、地下には揺れを増幅させる軟弱地盤が広がっていることが分かった。軟弱地盤による揺れの増幅は頑丈とされてきた建物にも被害を及ぼしていた。日本建築学会の調査によると輪島市にある鉄筋コンクリート造や鉄骨造などのビルのおよそ4分の1で建物が傾く被害が確認された。建物の基礎構造が専門の東京工業大学・田村修次教授は市営住宅を調査した。地盤が大きく動き本来、建物とつながっている杭が引きちぎられていた。軟弱地盤にビルなどを建てる場合、硬い地盤まで杭を打ち込むなどした杭基礎で建物を支える。今回、輪島市で傾いたビルのほとんどが軟弱地盤の上に建っていた。大きな揺れで杭基礎が損傷したのではないかと田村教授は考えている。中には横倒しになった7階建てのビルもあった。およそ50年前に建てられたビルでは杭基礎が大きく破壊されていた。隣にあった木造の建物が押し潰され2人の命が失われた。地震防災が専門の名古屋大学名誉教授・福和伸夫さんは能登半島地震で起きたことは首都圏でも起きうると指摘する。江戸時代以降、特に沿岸部の埋め立てが進められてきた東京。さらに関東平野にはもともと軟弱地盤が広がっている。その上に都市がつくられていることを忘れてはならないと福和さんは警鐘を鳴らしている。