江蔵智さんは1958年、都が運営していた「墨田産院」で生まれ、直後別の赤ちゃんと取り違えられた。その後血のつながらない両親に育てられ、今育ててくれた母親は認知症が進み老人ホームで暮らしている。父親は10年前に死亡。子供の頃から家族で自分だけ身長が高く、親戚からも外見上の違いを指摘されたという。自分自身でも家族と性格の違いを感じることがあり、30代後半に親子関係に疑いを持った。両親の血液型を知ったことをきっかけに40代でDNA鑑定。血縁関係がないことが判明した。江蔵さんは病院を運営していた都を訴え、東京高裁は2006年都に賠償を命じた。自分の出自が知りたいと考えた江蔵さんは墨田区に情報公開請求をしたがほとんどの文書が黒塗りでわからず。都に調査を要求したが応じてもらえなかった。4年前、江蔵さんは「出自を知る権利がある」として都を提訴。東京都側は「都に調査義務はない」として争ってきた。きょう、東京地裁は都の主張を退け「出自を知る権利」は憲法13条が保障する法的な利益だと言えるとして生みの親の調査を命じた。都は「判決内容を踏まえて対応を検討する」としている。青山学院大学の申教授は「日本では出自を知る権利が法制化されていないが諸外国では法制化されている国もある。日本も法制度の整備を」と提言している。