フィジカルAIでロボットの開発も進んでいるが、経験に基づく人間の技能や暗黙知はデータ化するのが難しいと言われている。技能伝承のための仕組みがデータの収集にも一役買えることが注目され始めている。その現場を取材した。埼玉県の介護施設「こうのすタンポポ翔裕園」は入居者数100人、スタッフも総勢100人ほど。介助作業中に耳元につけているインカムのような機器は、情報伝達以外に小型カメラで視覚情報も得られるという。映像と音声を別の場所で共有できる。司令用のスタッフのパソコンでは同時に複数人の状況を監視し指示を出すこともできる。水分補給一つ取っても入居者によって対応が違い、経験が物を言うのが介護の世界。音声と映像があることで適切な指示が出せるほか、後進の指導にも活用できる。このシステムを開発したのが2024年創業のスタートアップ「ASTER」の山田博之CEO。介護業界で働いていた経験から現場の負担軽減を目指し、3年かけて開発した。遠隔支援システム「ケアカメ」は骨伝導式イヤホンと小型カメラを一体化。導入費用は1台、月に1万円ほど。現在、施設内の介護に利用している段階だが、訪問介護などにも拡大していく予定。将来的にはAIを組み合わせ、さらなる介護サービスの進化につなげる構想もある。
