今をさかのぼること6年前。豊後大野市のとあるカフェで2人の男が川面を見つめため息をついていた。豊後大野の夏は大自然に囲まれた美しい奧岳川清流に観光客 が集まるものの、冬になるとめっきり客足を減らしていた。そんな現状に少なからず苛立っていたのは、東京からこの地へ赴任していた高橋ケン。高橋はそのカフェからさらに上流に約30kmという場所でLAMPという宿泊施設を任されていた。そもそも、高橋は東京にあるとあるIT企業のサラリーマン。何か面白いことができそうと会社が持っていた宿泊施設の経営に立候補したものの冬になると、カフェパラムに入り浸っていたという高橋を店主の小野光治は「Facebookで怒った顔で写っていた」などと話す。それでも2人は意気投合。冬の冷たい川を「サウナの水風呂」という発想に至った。きっかけはさらに1年前にさかのぼる。サウナの正しい入り方を教わると、当時はまだ九州に数基しかなかったというテントサウナを自分の施設に持ち込み早速、試してみた。もともとIT企業でビジネスのスピード感には自信のあった高橋は、カフェの川向かいにある「ロッジきよかわ」の江副雄貴も巻き込み。いきなりLAMP、カフェパラム、ロッジきよかわの3社で目の前の清流を水風呂にしたイベントをやろうと提案。当時は「サウナの水風呂が苦手」などと言っていた江副も、いざ自然の水風呂に入ってみた。こうして、“整っちゃったの輪”が広がり始めるととんでもないことを言い出した。「稲積の水中鍾乳洞を水風呂にできないか?世界一の水風呂になる!」稲積の水中鍾乳洞とは世界のジオパークにも選ばれている、貴重な天然資源。しかし思い込んだら一直線の高橋は、管理者の青松に直談判。ならばあの感覚を味わわせてしまえと鍾乳洞の前にテントを建て前代未聞の水風呂を体験させた。こうして、高橋、小野、江副、青松と次々広がっていく“整っちゃったの輪”に絶対の自信を持った高橋。しかも、豊後大野には何と、室町時代から辻河原石風呂という岩穴に薬草の蒸気を充満させて入浴するまるでフィンランドサウナのような蒸し風呂があった。これも温泉がなかったからこその先人の知恵だったのだろう。
さらなる運命を感じた高橋は、2019年12月、市長が年末の挨拶にやって来るタイミングで多忙の市長を捉まえ、渾身のプレゼンをぶちかました。しかも、高橋は有言実行の男だった。その後の高橋は集まった仲間とともにサウナ万博なるものを開催。川野市長は豊後大野市を“サウナのまち”と宣言。初めは「3年で帰る」と言っていた高橋ももうこの町に来て、8年目。サウナのまちの快進撃がはじまる。
さらなる運命を感じた高橋は、2019年12月、市長が年末の挨拶にやって来るタイミングで多忙の市長を捉まえ、渾身のプレゼンをぶちかました。しかも、高橋は有言実行の男だった。その後の高橋は集まった仲間とともにサウナ万博なるものを開催。川野市長は豊後大野市を“サウナのまち”と宣言。初めは「3年で帰る」と言っていた高橋ももうこの町に来て、8年目。サウナのまちの快進撃がはじまる。
住所: 大分県豊後大野市尾平鉱山57