国際報道 SPOT LIGHT INTERNATIONAL
アメリカのトランプ政権は貿易赤字が大きいインドに25%の追加関税をかけていたが、インドがロシアから原油や石油製品を購入していることを理由に8月末に25%を上乗せ。インドの関税率は合計50%と世界最高になった。インドにとってアメリカは輸出全体の約2割を占める最大の貿易相手国。2024年度の対米輸出額は860億ドル(約13兆円)で宝石・貴金属、繊維製品、水産物などを主に輸出している。輸出産業の現場で何が起きているか取材した。“カーペット・シティー”と呼ばれる北部の街「バドヒ」にある会社は取引先のアメリカ企業が関税発表を受け輸入を停止。約8,000枚のカーペットの在庫がたまっている。関税が発動された8月以降はアメリカから新規注文がなくなったという。従業員の出勤日数を半分に減らしてコスト削減を図っているが、カーペット作りを委託する近隣への影響を心配している。バドヒではカーペット作りが村の人の生活を支える唯一の産業だという。仕事の依頼が5分の1になったフセインさんは危機感を募らせ、ほかの街に移り住んで仕事を探すと語った。さらに深刻な影響が出ているのがダイヤモンド加工業。インド西部グジャラート州にあるスーラトは世界で流通するダイヤモンドの4分の3を加工する街。最大の取引先アメリカはダイヤモンド全体の35%を占め、輸出額は年間約50億ドルにのぼる。7年近くダイヤモンドの研鑽に従事したサスラさんは関税発表後に会社から半月分の給料を渡され突然解雇された。今は牛乳配達などをしているが、収入は半分以下になった。毎月友人から借金をしているが、子どもの学費も払えないという。地元の労働組合には労働者から解雇や収入低下に関する相談が相次いでいる。組合はスーラトだけで約3万人が失業し、今後最大50万人の生活が脅かされるおそれがあると推計している。