news every. (特集)
「東北少年院」仙台市の少年院。鍵のかかった扉の先は少年たちが生活する寮だ。窃盗や傷害などの罪を犯した少年たちが集団生活を送っている。職業訓練や資格取得に取り組む日々。スマホやゲームなどの娯楽は許されない。そんななかで3ヶ月に1度の楽しみが院内での放送、通称“少年院ラジオ”だ。夕食後の余暇時間に聞ける1時間の番組。少年院の少年少女向けで、東北地方2つの少年院で流れている。収録しているのは住宅街のスタジオ。パーソナリティは「DJ.Rosy」こと大沼えり子さん。4人のスタッフとともに番組を作っている。季節や日常生活のトークに続き、少年院の少年たちからのリクエストへ。直筆のカードに思い出の曲とそれにまつわるエピソードが書かれている。普段会わない少年院の子どもたちと声でつながろうとラジオを始めた。大沼さんは東京でラジオパーソナリティーの活動を始めたが結婚を機に地元に戻り、割烹の若女将に。子育てをするなか、非行に走る同年代の子どもを見て立ち直りを支えたいと考え、保護司のボランティアを始めた。そんなある日、大沼さんは少年院を見学。壁に貼られた1枚の作文が目に留まる。「僕は生まれてこの方笑ったことがありません」という文字を見たとき「ここには笑ったことがない子がいるんだ」と大きなショックを受けたそう。彼らを笑顔にしたいと思った。どうすればいいか考えたとき、声から心にちゃんと届くもの→ラジオで声を届けようと決めたのだ。こうして“少年院ラジオ”がスタート。コンセプトは「家族」。少年たちの思いを家族のように受け止めることを心がけた。でも声だけで思いが伝わっているのか、答えが出ないまま5年がすぎる。そんなある日、一通の手紙が来た。中学校にも通わず暴力団に関わり、3度目の少年院生活をする少年からだった。そこには「今まで自分は孤独だと、支えてくれる人などいないと思って生きてきた。けれどただただ更生を願ってくれる人がいる。ラジオをきっかけに私は夢を持つことが出来た。ロージーさんたちのように少年院の院生に語りかけることはできないが、少年院に入らないようにさせようと思った。そのために私は教師になろうと思った。」などと綴られていた。声だけでも繋がっていた大沼さんの思い。ある日、番組に届いた一通のメッセージには「ありがとう ごめんね。今まで自分はたえられないくらいの心配と迷惑をかけ父と母を傷つけてきた。それでも家族だからという理由でずっと支えてきてくれた。家族だからこそ謝ったり感謝を伝えるのが難しい時もあると思う。ですが、家族だからこそ素直にありがとう、ごめんねをこれから伝えていきたい。」とあった。
かつて少年院ラジオを聞いていた男性に会うことが出来た。20年前、少年院に1年間いた男性で、大沼さんの声が心の支えになっていたという。ラジオを始めて24年。この日は少年たちに笑顔になってほしいとダンスイベントを企画。講師に招いたのはTRFのSAMさん。大沼さんは表には出ない。声だけでつながりたいとそっと後ろから見守る。イベントを終えたSAMさんは「大沼さんは『この子たちに幸せになってもらいたい』という思いが強い方で、大沼さんに皆さんが出会えているのはすごくラッキーな子たちだと思う。」などと話した。24年間、ラジオでつながった心の絆。大沼さんが少年たちの未来について思うことを聞くと「ラジオを忘れてほしい。楽しいときとか(嫌だった過去を)忘れるじゃないですか。社会に出てうまくいっている時に『あんなこともあったな』くらいのことで十分、十二分。」などと話した。
