ニュースウオッチ9 (ニュース)
もうすぐ4月。就職や進学などで新たな場所で生活を始める人も少なくない。欠かせないのが引っ越しだが、今年は特にひっ迫し料金の高騰などで引っ越しに苦労する状況が生まれている。業者を取材すると値上げせざるをえない切実な事情も見えてきた。今月引っ越ししたという大学生。引っ越し先は約20キロ離れた同じ都内だった。男性は「見積7万950円。ちょっと高かった」と語った。男性は服を処分し減らした荷物を段ボールにまとめ宅配便で送った。費用は約2万6000円で済んだという。東京都内で家族3人で暮らす女性は子どもが保育園に入園するため3月末に車で15分の距離のマンションへ引っ越ししようと、見積もりを取ったところ「1社目が117万円、2社目が110万円、3社目が95万円。払えないと絶望感がすごかった」と語った。様々な業者と交渉し前回の依頼した業者に依頼。リピート割引で費用は50万円ほどになったという。引っ越しにかかる費用は年々上がっているというデータもある。比較予約サイトが行ったアンケート調査によると去年3月の2人以上世帯の引っ越し代金は平均で約23万円。2021年の1.5倍になったとしている。値上がりが続く要因はなんなのか。現在、繁忙期真っただ中の都内の引っ越し会社。見積もりの依頼は1日数百件に上るが実際に受注できるのはその1割ほど。トラックの空き状況をまとめた表には来月中旬まで満車の文字が並んでいる。この会社では人件費や資材の高騰で料金を1割〜2割値上げした。引っ越し会社・笠原大岳社長は「最低賃金、資材、段ボールなどの原価も上がっている。引っ越し料金に上乗せしなければいけない状態」と語った。さらに運送業で去年4月から始まった時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」の影響もあるという。需要が高まっているのが荷物を保管する場所を提供するトランクルーム。トランクルーム運営会社では例年3月〜4月に短期利用が4割ほど増えるというが、去年からはさらに増加傾向に。引っ越し費用が落ち着いたタイミングで荷物を運び出す人もいるという。トランクルーム運営会社・池田大和シニアマネージャーは「引っ越し業者が見つかっても高額すぎて引っ越しを諦めざるを得ない人が使うケースは増えている傾向がある」と語った。繁忙期の値上がりは今後も続くのか。流津経済大学・矢野裕児教授は、一過性のものではないとしたうえで「ピークを外した時期に引っ越しを行えるよう従業員を抱える企業などが取り組むべきだ」と指摘。企業側の工夫も求められるということだが転校などのことを考えると引っ越し時期をずらせないという事情もある。簡単には解決しない悩ましい状況が続きそう。