新プロジェクトX〜挑戦者たち〜 ゴジラ、アカデミー賞を喰う~VFXに人生をかけた精鋭たち~
果てしなく遠いハリウッドの背中。これまでにない才能が不可欠だった。山崎たちはSNSをチェックし面白いVFXを作っている人にメッセージを送信しスカウトを始めた。佐藤昭一郎はその時、10代の学生だった。YouTubeを見てVFXを独学で習得、大好きな山崎組のパロディーを作りSNSにアップしていた。さらにとんでもない才能と出会う。田口工亮。業界で「ひとりハリウッド」と呼ばれていた。遊園地のアトラクションで上映するゴジラを作ってもらうと驚がくの出来だった。山崎は「この仲間がいればゴジラができるかもしれない」。こんな時機を逃さない男が東宝・市川南だった。背中を押したのは阿部だった。ツルツルのゴジラから12年、再びゴジラに挑むと決めた。阿部という壁を越えその先へ。切り札のひとりが佐藤で大仕事を託した。映画冒頭で登場する架空の島「大戸島」をVFXで作り上げること。佐藤はこの仕事にかけていた。生まれは宮城県荒浜。小学5年生の時、東日本大震災が起きた。家は津波に流され間もなく母も病でこの世を去った。祖父母が親代わりとなったがいつしか学校に通うのがつらくなった。孤独の中、支えたものはVFXに没頭する時間。無料ソフトを駆使し植物のCGを作るのが異様に速かった。その腕を買われ託された映画冒頭のVFX。無名の山崎が阿部から託された時と同じだった。VFXのチェックに必ず来ていた阿部が姿を見せなくなっていた。末期のがんだった。