世界最速へ技術者たちの頭脳戦 スーパーコンピューター「京」

2024年6月22日放送 8:41 - 8:52 NHK総合
新プロジェクトX〜挑戦者たち〜 世界最速へ技術者たちの頭脳戦〜スーパーコンピューター「京」

2007年、開発の先行きは依然として霧の中。400人ほどのチームを見渡す追永の方法は独特なものだった。あらゆる部署を回って議論を交わし書類なしで要点をつかんでいく。CPUをつなぐインターコネクト担当の安島は悩んでいた。ここまでさまざまな知見を取り入れながら磨き上げてきたアイデア「Tofu」。しかし追永はさらに上を要求してくる。アイデアを振り絞っては議論を交わしていたある日、突然追永が言った。「次の変更が最後だ」。次回安島が出すアイデアを追永は自らの責任で採用する。猛然と考えていた週末、安島は新婚の妻と買い物に出かけた。そのときCPUをつなぐ画期的なアイデアが湧いた。エスカレーターを上り下りするうち思いは確信に変わった。思わず妻の恵美にまくしたてた。安島のアイデアは12個のCPUを3次元的につなぎかたまりにする。そのかたまり同士をさらに3次元でつなぐ。名付けて「6次元」。どこかが渋滞してもデータが自由に迂回できる画期的なアイデアだった。説明を聞いた追永は瞬時にゴーサインを出した。
同じ頃、性能3倍、電力半減を目指すCPU開発部隊も奮闘を続けていた。最難関の回路を担当する吉田。設計案を固める期限が残り1か月に迫っても常識からジャンプするアイデアが打ち出せない。そんな吉田を見ていた先輩の浅川岳夫。かけた言葉はひと言「できるよ」だった。先輩たちもこの重圧を超えてきた。そう自分を奮い立たせた。吉田にある回路のアイデアが降ってきたのは自宅でまどろんでいた夜。その回路を付け足すと計算データを記憶装置から圧倒的に効率よく取り出せる。そうなれば計算速度は跳ね上がり消費電力は下げられる。常識破りのアイデアだった。翌朝、興奮してチームに伝えると現場は沸き立った。開発から3年、ついにスパコンの頭脳が完成。2010年9月設置開始。直前には政府の事業仕分けの対象にも挙がったが開発の継続が認められた。宮城・栗原のケーブル工場は東日本大震災に見舞われた。それでも2週間で出荷を再開し納期どおりに仕上げてくれた。世界最速、1秒間に1京回の計算を目指すマシンは「京」と名付けられた。2011年6月7日、途中段階での性能テスト。結果は1秒間に8000兆回でいきなり世界記録を更新。そしてフルスペックで挑んだ2011年10月8日、「京」は29時間以上止まらずに方程式を解き終えた。目標の1秒に1京回を達成。米国、中国をぶっちぎりで上回るスピードをたたき出した。安島にはうれしいことがあった。追永が独特の言い方で褒めてくれたという。学会発表に2人は仲良く出席。激しい議論を交わした2人はそろって笑顔を見せた。常識破りの回路を生み出した吉田。400人のメンバーは世界一達成に歓声を上げた。の中で後輩にバトンを渡し終えた追永は最後列で控えめなガッツポーズを作っていた。


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理化学研究所東日本大震災神戸(兵庫)

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