住民の移動支える“多様な担い手”

2025年3月28日放送 18:39 - 18:46 NHK総合
首都圏ネットワーク (ニュース)

人手不足を背景に路線バスが減便するなど公共交通が縮小する傾向にある中、横浜市では多様な担い手が住民の移動を支える取り組みが始まっている。小型バスが走る横浜市旭区のこのエリアは坂が多くバス停も近くにない。高齢の住民は出かける際、坂を歩いて上り下りするかタクシーを呼ぶなどしていて移動は簡単ではなかった。小型バスは平日の3日間、一日14便、運行されている。大人は300円、70歳以上は100円で利用できる。通院や買い物などの際にタクシーよりも安く利用でき住民から好評。運行を担うのは地元のタクシー会社。住民から手軽に使える移動手段が欲しいという声が上がり市からの打診を受けて去年11月から実証実験を始めた。一日当たりの利用者は現在およそ30人。採算を確保するためには利用者を10人ほど増やす必要があり本格運行に移行するかどうか見極めている。
移動の手段を意外な存在が担っているケースもある。戸塚区にある特別養護老人ホームでは白い車を無料で運行していて近くの住民は誰でも乗ることができる。午前と午後に2便ずつ決まったルートを巡回する。特別養護老人ホームがボランティアで運行を始めたきっかけは、住民向けに開いたイベントの中で移動の手段がないという声を聞いたことだった。地域の力になろうと国の補助を活用して電気自動車を1台購入。運転を担当する職員も雇った。自動車学校で講習を受けてもらい安全な運行に努めている。ただ採算性の確保が難しく、この形自体を長く維持できていけるのかという点も問題。横浜市の場合、住民の利用が低迷し、採算性が確保できず本格運行を断念したケースや住民の主体的な関わりがなく実証実験に至らないケースもあったそう。東京経済大学・青木亮教授はバスやタクシー会社は今ある路線の維持で手いっぱいの状況で、人手不足のため空白地域での運行を担ってもらえない可能性が高い、この現状を理解して住民どうしが自分事として話し合うことが必要などと指摘。一方横浜市は住民任せにせずプッシュ型の支援に力を入れることにしている。具体的には運行の計画や方法を住民に提案して実験を後押しするなどの支援を新年度から始める。いわゆる交通空白は首都圏の共通する課題となっており、今は若くて困っていない世代も将来を見据えて今のうちから考えていく必要がある。


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