GET SPORTS レスリング 文田健一郎 「3年間の証明書」
グレコローマンスタイル60kg級の文田健一郎。3年前のリベンジを果たすべく地獄のトレーニングに励んできた文田。8月5日、パリ。迎えたパリオリンピックの会場には妻・有美さんの姿も。1歳の娘に戦うパパの姿を見せようと約15時間のフライトを経てやってきた。3年前はなかった家族の応援を背に挑む大舞台。グレコローマンスタイル60kg級1回戦は11−1で勝利。続く準々決勝は9−0。圧倒的な強さで勝ち上がっていった。準決勝の相手は世界選手権連覇中の王者、キルギスのZ・シャルシェンベコフ。この一戦には特別な思いで挑んでいた。そもそも文田といえば豪快な投げ技が最大の武器。東京五輪でもその武器が金メダルへの鍵だった。ところが相手に研究され、2021年東京五輪決勝では投げ技を一度も繰り出すことなく戦いを終えていた。そこで下した大きな決断。東京オリンピック以降は投げ技を封印。相手に極力ポイントを与えないよう徹底的に耐え抜くディフェンスを強化。それはこれまでとは全く逆のプレースタイル。そんな中、去年9月、転機が訪れる。世界選手権の決勝、その時の相手こそがシャルシェンベコフ。シャルシェンベコフは試合開始直後攻撃を仕掛け、いきなり文田を投げ飛ばした。すると文田も長らく封印していた投げ技を解禁。敗れはしたものの、積極的に投げを打ったZ.シャルシェンベコフと肌を合わせたことである気づきを得た。「自信のある攻めと守りを作る」。パリに向け磨いてきた守りのグレコローマンと呼び覚ました投げ技を融合し、新たなスタイルへと成長を遂げた。そのきっかけを与えてくれた男が今大舞台で自分のすぐ隣にいる。全てはこの一戦のために。
パリ五輪・グレコローマンスタイル60kg級準決勝。文田健一郎とZ・シャルシェンベコフの対戦。ポイントを先取されるも東京五輪から磨いてきたディフェンスで相手に追加点を許さない。第1は文田が1対0でリードを許す展開。しかし、文田は焦る気持ちはなかったのだという。第2ピリオドでは本来の武器である投技で4ポイントを奪い逆転。その後もリードを守りきった文田は4対3で勝利。激戦を制した文田はライバルと熱く抱擁し「僕のレスリング人生の中でお前が一番だ。明日俺も勝つしお前も勝ってこれがパリの事実上の決勝だったと言われるようにしよう」と伝えたのだそう。