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地元でとれたコメを一人一膳早く残さず平らげ、秋の豊作を祝う神事「早飯食い」。この神事が伝わるのは高 知市北部の土佐山高川地区。険しい山の斜面に段々畑が広がる。現在はゆずが植えられているが、かつてはほとんどが田んぼだった。しかし狭い棚田での米作りは重労働のうえ収穫量も少なくコメは貴重品だったため、地区の人にとって「早飯食い」は年に一度のぜいたくだったという。しかしいま、地区の田んぼは高齢化や担い手不足の影響で姿を消し、地元の米が集まらなくなってきている。地区で唯一となった米農家の高橋伸さん。ことしから祭りで食べるコメの準備高橋さんただ1人が引き受けるようになった。祭当日の朝、高橋さんが先月収穫したばかりの新米4.5kg約40人分が用意された。バケツを使い力いっぱいといでいく。お米のとぎ汁も無駄にはしない。境内に昔からある専用のかまどでじっくり炊くこと約40分、「100点」のお米が炊けた。地元でとれた新米のご飯におかずは焼いた味噌。今も昔も変わらぬ秋祭りの日のごちそうだ。祭の始まりを知らせる法螺貝が鳴り響くと地元の人が次々と集まってきた。この行事に参加できるのは現在も一家に1人だけだが、秋の実りを地元のみんなで味わおうと特別に地元の小学生が招待された。始まりの合図と同時に湯(先程のとぎ汁を使っている)を求める声「ユー」。お湯漬けにすることで一気にご飯を流し込もうというのだ。御年92歳の高橋利雄さんも食べる勢いは衰えをしない。「ゼン!」という掛け声は「御膳を下げてください」という合図。かつては満足に食べられなかった白米だけに慌ててかきこんだ様子が今でも引き継がれている。早く食べるのに加えて残さないことが早飯食いの習わし。子どもたちも懸命に箸を進め、残さず平らげた。