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ある郵便局の裏口を訊ねた。日本郵便の社員が建物のスペースを測定している。元々、郵便物の仕分け作業などが行われていた場所だが、別の郵便局に集配拠点が集約されたため今ではほとんど使われていない。空きスペースを有効活用し新規事業を立ち上げようという。その理由は郵便事業の赤字。昨年度の郵便・物流事業の赤字は118億円。主な要因はデジタル化が進み、葉書などの郵便物が減ったこと。2001年度にピークを迎えて以降は右肩下がり。郵政民営化された後も止まることはなく、昨年度の郵便物数はピーク時の半数以下に落ち込んでいる。赤字をカバーしようと様々な新規事業を立ち上げている。都内の郵便局では今年から郵便局員による空き家みまもりサービスを始めた。月額4280円から。外観・敷地など異変をチェックしていく。日本郵便はあの手この手で郵便事業の赤字をカバーしようとする。
郵便事業が赤字続きとなってしまうのには郵便物が減っている以外にも理由があった。山口県周南市でポストから郵便物を集めるのは一日一回。少子高齢化が進むこの地域。数が少なくても毎日集めなければならない郵便物。どんな地域でも原則4日以内に郵便物を届けることが法律で定められている。省令により郵便局も各市町村に1つは設置しないといけない。日本郵便が国営だった当時から続く公共サービス機能だが、民営化以降はコスト面で大きな負担となり赤字につながっている。日本郵便にとって経営上の大きな負担とも言える地方での郵便運営だが、逆転の発想で強みとして新事業を始めた郵便局もある。周南市内の郵便局の看板には診療所の文字が。局内のスペースでオンライン診療が行われ、郵便局員はパソコンに不慣れな患者をサポート。この地区は医師が一人もおらず、地方にも必ずある郵便局を活用しオンライン診療を始めようと事業がスタートした。自治体から受託した事業で薬は後から受け取ることができる。
次々と打ち出す新規事業で郵便事業の赤字はカバーできるのか。日本郵政の経営戦略に詳しい一橋大学・加藤俊彦教授は一部で収益がでている新規事業もある一方で、地方の公共サービスなどで大きな収益は出ず、郵便ネットワークの維持が経営の足かせになっていると指摘。地方での郵便ネットワークの維持・活用などについて政府は6月、日本郵便に年間約650億円の交付金を支給することを決定。これについて加藤教授は、いち民間企業への交付金支給は他の物流会社との競争に有利に働く可能性もあり、国民を含めたさらなる議論が必要ではないかと指摘した。民間企業として収益を追求しなければいけない一方で、公共サービスの維持も求められる日本郵便。今、郵便局のあり方そのものが問われている。
