スポーツ×ヒューマン (スポーツ×ヒューマン)
水谷瞬は左脇腹の違和感を訴え、今季は2軍からスタートした。ナイジェリア人の父、日本人の母を持つ水谷は高校時代、度重なるケガに直面。また、外国にルーツを持つことを揶揄されもした。それでもやるべきことをコツコツと積み重ね、2年の秋からレギュラーに抜擢。甲子園出場は果たせなかったが、ソフトバンクからドラフトで5位指名された。ただ、在籍中、1軍の試合に出場できず、自らのグラブに「Ask Yourself」と刺繍した。伝説のボディビルダーの言葉で、水谷にとっては自らを鼓舞する言葉だという。昨季の春季キャンプ、水谷は失敗をおそれ、スイングが縮こまっていた。佐藤コーチは「当てることに精一杯、当てないと怒られる、代えられるという恐怖観念でやっていた」と回想。
佐藤コーチの指導のもと、水谷はバッターボックスでの意識を変えたことで躍進した。今季は2軍スタートだったが、1軍に負傷者が出たため、昇格を果たした。4月19日のオリックス戦、水谷は5打席目にHR。試合後、朗らかな表情を見せていた。だが、その後は打撃不振となり、2軍降格が告げられた。足の高さを微調整、クセの改善などバッティングの改革に取り組むなか、5000人が集まった2軍の試合でタイムリーヒット。新庄剛志監督は「結果はでていないくても内容がいい」と高く評価し、交流戦に起用した。水谷はソフトバンク時代、ケテル・マーティの自主トレに参加したことがあり、心にゆとりを持って試合に臨むなどの価値観を学んだ。交流戦16試合に出場し、打率3割、3本のHRをマーク。ファンは水谷のミドルネーム、ジェシーを歌詞に取り入れた応援歌で水谷を鼓舞する。
水谷は試合を終えると、打席での配球をノートで整理し、分析に費やしている。楽天戦で先頭打者ホームランを含め、初となる1試合2本のHR。さらにプロ7年目にして初の2桁HRも達成。水谷は「困難な時期こそ楽しみ、野球は本来どういうものだったのか、思い出しながらできたらいいのかな」などと語った。