2023年11月21日放送 0:35 - 1:20 NHK総合

スポーツ×ヒューマン
選 永遠の“キャプテン” アンドレス・イニエスタ

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(オープニング)
オープニング

7月1日、アンドレス・イニエスタ選手のラストマッチが行われた。彼は誰よりも神戸を愛した人物だった。そんな彼がなぜ退団という決断に至ったのか。スタッフから未公開の映像を入手した。収められていたのは声を荒らげ本音を吐露する姿で見たことのない人間・イニエスタだった。決断の裏側にあった葛藤。そして神戸に何を残そうとしたのか。イニエスタの最後の日々を見つめた。

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永遠の“キャプテン” アンドレス イニエスタ

2018年、当時34歳のアンドレス・イニエスタはヴィッセル神戸にやってきた。お世辞にも強いとは言えなかった当時のヴィッセルをアジアNo.1まで引き上げてほしいという申し出にイニエスタは奮い立った。イニエスタはスペインの強豪バルセロナに16年在籍、巧みなドリブルやパスでチームを引っ張り、国内リーグ9回、ヨーロッパチャンピオンズリーグを4回制し、2010年のワールドカップでは母国を初優勝に導いた。輝きは日本に来ても色褪せず、加入2年目にはキャプテンを任され、ヴィッセルは天皇杯を制覇した。イニエスタに引き上げられ、周りの選手たちも成長していった。“チームをアジアNo.1に”という夢はイニエスタに導かれ、みんなの夢になっていた。

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2022年、チームは前年Jリーグで過去最高の成績を収めACLの出場権を得ていた。ところが、先駆けて開幕したJリーグで11試合勝利なし。コロナ禍で十分な準備ができなかった影響もあり、けが人が相次いだ。チームは迷走を極め、わずか4か月で監督の交代が3回、そのたびに方針が変わった。チームの中心であるはずのイニエスタの起用法にも変化が見られ始め、後半が始まって間もない場面で交代させられる場面が増えた。ACLの決勝トーナメントが迫る中、イニエスタのメンタルは追い込まれていた。心を立て直すために7月、イニエスタはリーグの中断期間を使ってスペインに帰国。コロナで2年半離れていた家族と会い、笑顔を取り戻した。

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2022年8月18日、ACL決勝トーナメントの1回戦は横浜F・マリノスとの対決。しかし、イニエスタの出場はなかく、ベスト8に勝ち進んだこの大会で最後までイニエスタがピッチに立つことはなく、夢だったアジア王者への挑戦はあっけなく終わった。イニエスタは兄弟と慕うマネージャーのジョエル・ボラスに「監督やクラブが僕を必要としていない。一番重要な試合に出られなかった。交代というものは機械的ではなくサッカーの戦術の一部であるべきだ」と本音を吐露。ボラスは「君は交代を受け入れられていない」と指摘した。ACLというこの年最大の目標を失ったヴィッセルの悪い流れは続き、Jリーグでも降格圏内のがけっぷちにいた。この間、イニエスタはけがもしてしまった。苦悩の日々の中で、落ち着いて自分を見つめ直すのはいつも家族の元だった。イニエスタは自らの新たな役割について妻に打ち明けた。

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シーズン残り7試合、これ以上負けるわけにはいかない状況。イニエスタはクラブの全ての人を集めてミーティングを開いた。イニエスタが感情を出してチームを鼓舞したことで、トレーニングの雰囲気や試合に臨む気持ちが変わったという。ミーティングからチームを5連勝し、一気にJ1残留を決めた。苦しんだ1年、イニエスタは初めてピッチの外からチームを導いた。

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裏方に徹したシーズン後半。三浦知良との会話がイニエスタに強い印象を与えた。イニエスタは「彼の年齢まで続けられたないとは言ったが、まだプレーを続けサッカーを楽しみ続けたい。そして自分が気持ちよく過ごせる道を探したいと思った」と話した。

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2023年、イニエスタは決意を新たにシーズンを迎えた。チームはスタートダッシュに成功し首位を走ったがイニエスタはピッチ外にいた。生まれ変わったヴィッセルのサッカーは全員が豊富な運動量でボールを奪いに行き、速攻でゴールを目指す。その戦術に磨きがかかり、皮肉にもイニエスタに頼らずとも結果が出せるように変わっていた。開幕から3か月たってもイニエスタの出番は来ない。プレーヤーとして残された時間が少なくなる中、5月23日にイニエスタは1か月後に退団することをチームメイトに伝えた。イニエスタはピッチに立ち続けることにこだわった。

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退団を決めたイニエスタは神戸につくったサッカースクールを訪れた。スクールでは子どもたちの気づきを何より大切にしてきた。うまくなる近道は自ら考え努力を続け、楽しむこと。イニエスタは「アカデミーが長く続いていくことが私の願い。経験を通して得たものを差し出すと同時に学ぶ。それが人を豊かにしてくれる」と話した。ラストマッチまでわずかの間、多くのファンと神戸での時間を過ごした。

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2023年7月1日、イニエスタの神戸でのラストマッチの日。イニエスタがいた5年間で最多の観衆が詰めかけた。イニエスタは今季初の先発出場。神戸への思いをプレーに込めた。試合後のロッカールームでイニエスタは「全員が自分は“大事な選手”なんだと思ってほしい」と語った。イニエスタが残したものについて選手は「プロフェッショナルとしてのあり方、勝者としてのメンタリティ」などと話した。退団のメッセージでイニエスタは「また日本に帰ってきます。ここは私たちの故郷だから」と話し、サポーターはこの日のために作られた特別な応援歌でイニエスタを送り出した。

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