2024年9月9日放送 1:28 - 2:28 TBS

ドキュメンタリー「解放区」
労組と弾圧〜関西生コン事件を考える〜

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(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

労組と弾圧 ~関西生コン事件を考える~
労組と弾圧 ~関西生コン事件を考える~

1980年4月、国鉄などの労組による全国ストライキを翌日に控えたときのニュース映像では、電車が動かなくなるため会社に泊まり込む人やビジネスホテルに止まる人が溢れていた。ストライキが日常であったころから半世紀近くが経ったいま、労働運動への国民意識は大きく変わった。今尚、労働者の権利を訴え続けている全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部「関生」はかつては関西最強の労働組合と呼ばれていたが、2018年に警察による強制調査が始まり81人が逮捕され、大規模の国家権力の介入となった。

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ストライキ全日本建設運輸連帯労働組合日本国有鉄道

生コンクリートは砂利・砂・水・セメントを混ぜ合わせ作られる。生コン運転手の松尾は全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部「関生」の組合員であり、当時はセクハラを受けていたが組合の人に相談したらすぐに応対してくれたのだと語った。松尾が生コン業界に入った頃は生コン価格が安定し給金も上昇していた時期であり、2000年代の始めには生理休暇など女性労働者の権利を獲得していた。しかし生コン運転手の労働条件が向上するまでには過酷な闘争の日々があった。

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全日本建設運輸連帯労働組合

戦後、高度経済成長期の日本ではあらゆる社会基盤の整備にコンクリートは欠かせず、生コン業界も急成長した。生コン会社の殆どは中小零細企業であり、生コンは在庫調整ができないためである。一方で原料購入先は財閥系大手が多く、発注に応じて現場に駆けつける必要がある。生コン業者の発言権は小さくなり買い叩かれ、生コン運転手は「練り屋」と業界最底辺に位置づけられてきた。そんな労働環境の改善を目指して1965年に関生が誕生した。関生は産業別労働組合であり、労働者が個人で加盟し同じ産業でまとまって雇用主と交渉する。関生は企業と交渉して賃上げ・正社員化・休日保証など労働者の権利を獲得してきた。しかしときに激しい交渉姿勢が反社会的だとして経営側の嫌悪感と権力介入を招いていた。1982年に関生組合員が殺害される事件が勃発し、犯人は暴力団員で、会社経営者の妻が2000万円で依頼したと自供した。一方で関生が音頭を取り、生コン各社が加盟する現:大阪広域生コン協同組合という経営側の団体を創らせてゼネコンと対峙させ、生コン価格の引き上げを求め、運転手の環境改善を目論んだ。現:関生の委員長である湯川は大阪広域の一部幹部に利益配分が偏っていっていたなどと明かした。

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全日本建設運輸連帯労働組合大阪広域生コンクリート協同組合武建一

福島市にある瀬戸の自宅を取材。瀬戸は度が過ぎている労働組合は左にしか見えないため自分が介入したなどと語った。

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福島市(福島)

瀬戸は当時、大阪広域の理事長から直接電話で依頼を受け、報酬を得て活動していたなどと明かした。関生が瀬戸のブログについて名誉毀損に当たるとして訴訟した裁判では、一部の内容が名誉毀損になるとして10万円の支払いを命じる判決がくだされている。大阪広域は瀬戸への報酬は否定しているが、当時瀬戸の活動現場には依頼した理事長たちの姿も映像に残されている。大阪広域と会社側は関生組合員らを威力業務妨害容疑で告発・告訴した。警察も素早く応対し、関生組合員のべ81人が逮捕され71人が起訴となった。2024年1月、大阪広域理事長の木村は取材に応じなかったが、副理事長の地神が弁護士を伴って取材に応じ、関生を労働組合だとは思っていないと断言した。

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全日本建設運輸連帯労働組合大阪広域生コンクリート協同組合

一連事件で逮捕された関生組合員である吉田は19歳の頃に生コン運転手となり、先輩に誘われる形で関生に加入し、毎年のように労働環境が改善していった。吉田は奈良ブロックの幹部として勧誘活動に尽力していた。吉田は日雇い運転手の正社員化を要求すると会社役員の女性は会社を廃業するため就労証明書も出せないと主張したなどと伝えた。2019年に吉田らは女性役員に義務なき就労証明書の作成・提出を執拗に迫った強要未遂容疑で逮捕されている。吉田は逮捕時の取り調べは半分以上が強要未遂についてではなく労働組合をやめないかという話がメインであったなどと明かした。収監された吉田の面会を当時許されていた弁護士の久堀は自分が接見に行かないと吉田は精神が崩壊するほど追い詰められていたなどと告げた。当時の吉田は心が折れ、裁判長あてに罪を認める上申書を書き始めたが妻がそれを止めさせ、4ヶ月半の拘留に耐え、否認のまま保釈となった。しかし、吉田は組合員の殆どが辞めていることを知り裏切られた思いでショックだったなどと話した。

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全日本建設運輸連帯労働組合木津川市

生コン運転手の松尾は組合員の男性と再婚を果たしていた。松尾の義兄となった男性は加茂生コン事件で逮捕起訴され、罪を認め関生を脱退して保釈された執行委員であった。松尾は会社を解雇されたが組合を抜けることはなく、組合を抜けた夫とは現在別居生活を送っている。吉田は京都地裁では有罪判決がくだされたが、大阪高裁では会社には就労証明書を作成・提出義務があり証明書を求め続けたことは非難できない逆転無罪判決となった。

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京都地方裁判所

2023年3月、和歌山県広域協組が関生事務所に元暴力団組員を差し向けたことに対し、関生が謝罪を求めた行為が強要未遂などの罪に問われていたが、大阪高裁は産業別労働組合が団結権を護るために正当な行為だったとして無罪判決を下した。大阪府警警備部長・警察庁警備局長・警視総監を歴任してきた池田は組織暴力に近いという判断をしているなどと意見を語った。労働法学会の有志声明では刑事弾圧だとしており、連名に名を連ねた吉田名誉教授は「刑事弾圧」という言葉はかなりきつい表現で、法律で許容されている範疇での出来事で刑事責任が問われ極めて大量に立件され、取調べ過程でも脱退勧奨が行われ、この事実は労働法を学んできた者としては見過ごせなかったなどと告げた。吉田名誉教授は組合活動において労働者と雇用主の関係を誤解してはならず、傍目からみると刑罰法規に当てはまるようでも正当な組合活動であれば刑罰は問わないのが労働基本権確率の第一歩なのだなどと説いた。

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全日本建設運輸連帯労働組合和歌山県広域生コンクリート協同組合大阪高等裁判所日本労働法学会立命館大学

関生組合員の吉田は検察側が最高裁に上告したためこの日も裁判に向かっていた。最高裁は無罪判決を破棄し、審理差し戻しとした。大津地裁で新たに組合員7人に無罪判決が下った。検察は控訴を断念し、一連事件では現在10人の無罪が確定しているが、この事実は殆ど世間に知られていない。

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全日本建設運輸連帯労働組合大津地方裁判所最高裁判所
(エンディング)
エンディング

エンディング映像。

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