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- 佐藤庸介
オープニング映像。
食料・農林水産担当の佐藤庸介解説委員が農林中央金庫の巨額赤字について解説。解説のポイントは(1)農林中央金庫とは、(2)巨額赤字の背景と影響、(3)今回の事態の意味は、の3つ。農林中央金庫(農中)は農林水産業の発展が使命。農協が集めた資金を増やして再び農協に返す役割。個人向けの窓口は全国各地の農協が中心。農家でなくても利用できる。預金のうち貸出に向けられない分が都道府県レベルの信連を通じて農中に集まる。個別の農協から集まる分もある。これら全てを1つとみなし、JAバンクと呼ぶ。預金量は108兆円(2024年3月)でメガバンクをしのぐ規模。運用額は56兆円にのぼり、運用益を農協に還元している。安定した高い利回りは“農中モデル”と呼ばれ、高く評価されたこともある。農家が兼業化したことで農業以外の収益が増え、経済成長による地価高騰で農地の売却収入も増えた。農家以外の利用者も増えた。一方で農業の衰退で資金需要が細ったことから貸出は低迷し、運用規模が膨張することになった。
巨額損失の背景にはリーマン・ショックがある。証券化商品や株式が大幅に値下がりし、2009年3月期には5700億円あまりの最終赤字となり、1.9兆円の資本増強をして経営を建て直した。より安全性の高い国債中心の運用に変え、日本より利回りが見込める欧米国債に軸足を置いたが、欧米国債が値下がりしてしまった。関係者は売却の判断が遅れたのは運用額が大きく身動きが取れなくなったとみている。農中は来年3月期の最終損益は5000億円を超える赤字の見通しで1.2兆円規模の資本増強を行う方針を5月に示した。さらに6月になって欧米国債の売却などで損失額1.5兆円規模に拡大する可能性もあると明らかにした。坂本農相は「農家への影響は想定していない」と会見で述べたが、農協への影響が心配される。農協は農産物の販売・資材の買い入れなど経済事業が柱となっているが、約8割の農協が赤字のため、預金の取り扱い・共済の販売など金融事業で赤字を埋めている。農中の還元額は年3000億円規模で金融事業の利益の中心となっている。今年度は600億円規模の配当金が減るとみられ、農中の業績が回復すれば影響は限定的だが、農協は農中頼みという脆い面が見えた。鈴木金融相は「規制水準を超える十分な自己資本を有していることから財務の健全性は確保されている」と述べている。
今回の問題は農協に重い課題を突きつけた。農中はなぜ損失が膨らむまで売却判断ができなかったか検証してリスク管理体制を見直すのが急務。農協・信連は農中に資金が集まり、運用先に窮する現状を見直す必要がある。農業の資金需要を掘り起こし、農産物の販売など経済事業の収支を改善しなければならない。地域住民のニーズに応え、もっと開かれた経営が求められる。農協の経営に詳しい中央大学の杉浦宣彦教授は「本質的な問題は農中の運用失敗だけでなく、多くの農協が預金増=収益増という単純なビジネスモデルに依存していること。本気でモデルを見直さなければ何のための「農協」なのか疑問を持たれかねない」と指摘。今回の巨額損失はJAバンクが岐路に立っている現状を浮き彫りにした。国も改めて真剣に考えなければならない。
エンディング映像。