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今年夏、世界の平均気温は観測史上最高を更新。産業革命前からの気温上昇を1.5度に押させる国際目標は危機にひんしている。気候変動を食い止める鍵を握るとされる「気候テック」について、この番組で特集。
オープニング映像。
建物関連のCO2排出量は日本全体の4割。大成建設で進められているのが「ゼロカーボンビル」というプロジェクト。資材の調達から解体までの全てを通じてCO2排出量実質ゼロを目指す取り組み。資材調達においては、人工的にCO2を吸収させた特殊コンクリートを新たに開発したり、スクラップされた鉄をグリーン電力で溶かして再利用するなどの取り組み。施工段階では、グリーン電力で動くクレーン車などを活用。運用段階では、太陽光パネルの設置や人感センサーによる空調機器制御などで徹底的な省エネルギーを目指す。
万博の大屋根リングの建設にも携わる清水建設では、CO2削減のため木造建築に注力。目指すのは木造建築の11階建て高層ビル。木材の最大の課題は火に弱いことだが、木材に鉄骨を埋め込むなどして対策。耐震性を高める効果も。完成すれば20%のCO2削減が実現。東京駅周辺では2030年頃までに複数の木造高層ビルが建てられる予定。
CO2削減のため木造建築に注力する清水建設では、木を育てる試みも始めている。群馬に森を借り受け、苗木400本を社員自ら植えるなどした。老木になりCO2を吸収しにくくなったら新たに伐採する予定。
都市のゼロカーボン実現のため重要となる再生可能エネルギー。千葉県匝瑳市では、太陽光発電パネルの下で農作物を育てる「ソーラーシェアリング」の取り組みが行われている。これを紹介する研修会には世界中の人たちが参加。耕作放棄地をこれに生まれ変わらせることで、農家としてもエネルギー収入が得られる。この農園では売上の2~3%を地域に寄付。
日本で生まれた新技術「ペロブスカイト太陽電池」。次世代型の太陽電池で、薄くて軽く曲げることも可能。ゆえにどこでも発電できる。これの事業化を目指す積水化学工業では、フィルム製品の印刷などに使う巨大プリンターで製造。今後爆発的に普及すれば低コストかも見込まれる。課題は水に弱いことだが、特殊な1mmのフィルムで水分を遮断することで解決。柱など様々な施設で実証実験が始まっている。
日本で生まれた新技術「ペロブスカイト太陽電池」。原料はヨウ素。日本は世界2位の埋蔵量を持ち、国産化を見込めると大きな期待が寄せられている。課題はコスト。大阪・関西万博の会場や福岡のドーム型球場などで実用化される見込みで、これにより解決していきたい考え。
都市のCO2削減のために重要な循環型経済(サーキュラーエコノミー)。鍵を握るのはリサイクル技術。廃棄された製品を原料にして再利用する場合、循環が数回繰り返されることで品質が劣化。日本のスタートアップ企業「JEPLAN」では、独自の技術で劣化を防止。廃棄製品を分子の状態まで分解する仕組み。理論的には半永久的にリサイクルできる。洋服などにも応用できる技術。工場はすでに稼働していて、再生PET樹脂の製造能力は年間2.2万トン。COP28にもブースを出展するなどし、世界から注目されている。
東京湾で行われたブルーカーボンへの取り組み。海藻「アマモ」の種を回収し、海の中に森を作る計画。CO2吸収にも役立つ。主催するのはNPO団体の海辺つくり研究会。市民や企業、行政などを巻き込み輪が広がっている。目指すのは、大都市みなとみらいでの育成。アマモの様子は毎日記録。
人口1人当たりの都市公園面積は全国最下位と緑が少ない大阪。9月、大阪の一等地に「グラングリーン大阪」が誕生。この近辺はかつては田んぼが多かったが、大阪駅の開業などを契機に急速に都市化。貨物駅跡地の再開発を巡って「新しいビルで埋め尽くしたほうが経済効果が高い」との意見もあったが、NYセントラルパークのような施設を目指して開発されることが決定。
三菱地所が手掛けた「グラングリーン大阪」。目指したのは緑とイノベーションの融合。建物がある部分にもテラスを配置するなどして、敷地全体で緑を感じられる施設に。駅周辺にもともと生息していた植物など20種・1600本以上の多様な樹木が植えられる計画。公園の存在はヒートアイランド現象の緩和にも役立つという。複合施設のビル地下50mには帯水層があり、これを空調に活用。標準的なビルに比べ、CO2排出量を35%以上削減することが目標。