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ユネスコから世界で最も美しい美術館と称えられたのが下瀬美術館。設計したのは建築家の坂茂さん。今年、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した。石川・珠洲市では能登半島地震で大きな被害を受けた。取り組んでいるのは仮設住宅作り。芸術は誰のためのものなのか、多くの芸術家が自身に問いかけている。11月19日に高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式が行われ、各部門で芸術の発展した芸術家たち。正仁親王妃華子さまがご臨席された。そして選考に関わった各国の国際顧問が立ち会い受賞者にメダルが授与された。翌日、受賞者たちは皇居へ。天皇皇后両陛下に拝謁した。
オープニング映像。
建築部門の受賞者は坂茂さん。周囲の環境を活かしながら斬新なフォルムを持った建築物を手掛けてきた。下瀬美術館の「紙の家」の建材には紙管が使われた。軽いのに強くて価格も安く、温もりのあるフォルムが居心地の良さを生み出す。紙管を使いだしたのは駆け出しの頃。家具の展示会場の内装にFAX用紙の芯を木材の代わりに使った。本格的に紙管を建材として使おうとした時にルワンダ内戦の様子を目にした坂さんは自らルワンダに行き、紙管でシェルターを作った。活動を通して坂さんは特権階級の仕事だけをすることに虚しさを感じた。阪神・淡路大震災で建物が崩れて犠牲者が出たことから建築家の責任を感じ、神戸で紙管を使った仮設住宅作りに奔走した。東日本大震災でも集会場の建築に紙管を活用した。能登半島地震では珠洲市に向かい、長く住めるよう紙管ではなく木を活用した。能登では損壊した古民家などの能登瓦を復興建築に利用する取り組みも始めた。
演劇・映像部門の受賞者はアン・リーさん。台湾で生まれたリーさんは大学受験に失敗し芸術学校に進学。卒業後はアメリカで演劇と映画製作を学んだ。「グリーン・ディスティニー」はアカデミー賞外国語映画賞など4部門を受賞した。「ブロークバック・マウンテン」ではアジア人初のアカデミー賞監督賞を受賞した。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」では2度目のアカデミー賞監督賞を受賞した。
彫刻部門の受賞者はドリス・サルセドさん。コロンビアで内戦の時代を生き、人々の苦しみを体に染み込ませて育った。
彫刻部門の受賞者はドリス・サルセドさん。サルセドさんは犠牲者たちの困難さや経験を取り上げ作品にして世界で共有できるようにすることが大切だと話した。内線の犠牲者を悼み、大量の武器を溶かした板を使った作品を製作した。板を叩いていたのは内線での性暴力被害者の女性たちだった。棺桶と同じサイズの土を上下の机で挟み込んだ作品では、天板を突き抜けて草が生えていた。抑え込もうとしても芽吹く命の象徴だった。
世界文化賞の存在意義はますます大きくなっている。芸術は誰のために存在するのか歴代受賞者も自らに問い続けながら活動してきた。音楽部門の受賞者ヨーヨー・マはコロナ禍のワクチン接種会場でチェロを演奏したのが話題になった。
演劇・映像部門の受賞者アソル・フガードは作品を通して南アフリカのアパルトヘイトを批判してきた。20代の時に当時禁止されていた白人と黒人の共演作「血の絆」を発表した。
演劇・映像部門の受賞者シルヴィ・ギエムさんは100年に1人の逸材を称されるバレリーナ。東日本大震災が起きた2011年にギエムさんに憧れてバレエの練習をするいわき市の陽香さんと出会った。いわき市に公演にやってきたギエムさんに陽香さんはサインを求めた。苦しい時サインに勇気づけられたという。
ギエムさんのサインに勇気づけられたと話していた陽香さんは今も土日のバレエが楽しみになっている。
世界文化賞では若手芸術家奨励制度を設けている。今回の対象団体はインドネシアで初めての民間複合文化施設コムニタス・サリハラ芸術センター。スハルトが独裁政治を行いインドネシアでは自由が制限された。自由を求めて結成された組織を母体に2008年に創設された。
絵画部門の受賞者はソフィ・カルさん。「限局性激痛」は失恋体験による心の痛みが癒やされる過程を写真と文章で表現した。「ヴェネツィア組曲」は街で見かけた人を尾行してその行動を捉え写真と文章で記録した作品。その3年後には街で拾ったアドレス帳に記載された人々を訪ね、内容をエッセイ化した。写真家の杉本博司さんは、これらの行為こそがカルさんのアートの真髄だと語る。カルさんは杉本さんらと11年前、靖国神社の境内で行われた蚤の市に素性を隠して参加した。
音楽部門の受賞者はマリア・ジョアン・ピレシュさん。1980年代にリサイタルデビューを果たすと世界を舞台に活躍した。ことし11月にはマティアス・ゲルネと共演した。ピアニストの小林海都さんはかつてピレシュさんのもとでピアノを習いその音に衝撃を受けたと語った。
音楽部門の受賞者はマリア・ジョアン・ピレシュさん。活動拠点を訪ねると、ピレシュさんはポルトガルの農村地帯で畑で農作業に精を出していた。授賞式で坂茂さんは受賞者を代表して「みなさんは常に社会的な問題を批判したり解決を提案したり、そういうことを活動としていらっしゃるアーティストだと思う」と話した。世界文化賞の受賞者、小澤征爾は2022年にオーケストラの演奏を宇宙ステーションに届ける演奏会に挑んだ。これが生涯最後の指揮となった。
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