- 出演者
- 河野憲治
混迷の世紀15回はアメリカ大統領選挙を扱う。
オープニング映像。
民主党の大統領候補となったハリス氏は最初の演説で「全てのアメリカ人のための大統領になる」「大統領選挙を通じて分断を乗り越えるとき」と訴えた。ビリー・アイリッシュやテイラー・スウィフトなどの著名人が続々と支持を表明した。当初ハリス氏への支持は右肩上がりを続けていたが、2か月が経った頃に頭打ちになった。ウィスコンシン州の沿道には両候補の看板に混じって、選挙戦で語られる内容に不満を抱いた市民たちが自分たちでお金を出して作った看板が掲げられていた。農家のブリーテンモーザーさんはことし異常気象の影響で2000万円以上の損失が出る見込みで、将来のエネルギー政策が示されるべきだと訴えた。気候変動対策を優先課題に掲げる民主党を支持してきたが、テレビ討論会で具体策を語らずに雇用問題に議論を移し相手を批判したハリス氏の発言に失望したという。
ハリス氏はペンシルベニア州で主要産業だった鉄鋼業の労働者に「私は常にアメリカの鉄鋼労働者に寄り添います」と語りかけた。ペンシルベニア州は長年労働者を支持基盤としてきた民主党の牙城となっていたが、製造業などの国内産業が衰退し白人労働者層の間では不満がくすぶっていた。2016年の選挙でトランプ氏が労働者の不満をすくい上げ、民主党は敗れた。今回もトランプ氏はペンシルベニア州でアピールを繰り返し、自分こそが労働者の味方だと強調した。民主党の経済政策を批判するトランプ氏に対し、ハリス氏も批判のトーンを強めるようになった。民主党陣営はペンシルベニア州の大学生が多く住む地域で集中的に訪問活動を行い、中絶の権利を擁護する方針を強く打ち出していることを伝えて支持を訴えた。ウォール・ストリート・ジャーナルが行った調査では、トランプ氏が経済やインフレなどの課題に適切に対処できると評価されているのに対してハリス氏がリードしていたのは中絶と社会保障にとどまっていた。
ウィスコンシン大学のプラーシュ准教授は選挙戦の印象を学生たちに尋ねた。「トランプ氏もハリス氏もネット受けするネタでブランド化している」「トランプ氏がやつらを爆撃しようと呼びかければフォロワーは熱狂するがそれによって疎外される人も大勢いる」といった声が聞かれた。プラーシュ准教授は両候補ともそれぞれの政策テーマの体現者として自分をブランド化している、有権者はそれぞれのブランドと切り離して見ることができなくなっていると話した。前回の選挙後に起きた連邦議会乱入事件の翌日にクラスで議論をしたという学生は、襲撃が国にとって悪だということさえ全員で同意できなかったことに衝撃を受けたと語った。世論調査では、アメリカ人の27%が選挙後に内戦が起きる可能性があると考えていた。プラーシュ准教授は選挙後に国がどうなるか心配している有権者がほとんど、自分の身の回りで政治的二極化の影響を感じていると話した。
今回の選挙で有権者の関心が高いのは経済政策やインフレ対策などで、気候変動対策やイスラエルとハマスの戦闘といった国際的な課題への関心は半分以下にとどまっている。イアン・ブレマー氏はこれからのアメリカは世界へのリーダーシップを低下させていく、アメリカの指導力が弱まることで国際情勢はさらに緊迫しかねない、イスラエルより力があるのに停戦が実現しないのはリーダーシップを果たそうとしないからだと指摘した。
オーストリアで気候変動対策の陣頭指揮を執るグライスベルガー局長は、気候変動対策に大きな影響があるため大統領選挙を中止していると話した。アメリカは民主党政権下で巨額の資金を投じてきたが、トランプ氏は対策の国際的な枠組みに背を向けてきた。EUは温室効果ガスの排出を実質ゼロにするため気候変動対策を主要政策に掲げてきた。ドイツのショルツ首相は安全保障をめぐってNATOの中でもアメリカとの協調を最優先にしてきた。10月にベルリンで行われたウクライナやガザなどでの戦闘集結を求める集会に集まった参加者からは、リーダーシップを発揮できないアメリカに対して失望の声が聞かれた。与党外交政策担当のシュミート議員は、この20年ヨーロッパ周辺の安全保障へのアメリカの関与は減っている、ドイツはヨーロッパ各国とともにより大きな責任を負う準備をしている、ヨーロッパが主導権を握りアメリカは政治的・経済的な後ろ盾を提供するだけでも構わないと話した。
イアン・ブレマー氏はどちらが勝っても国民の半分は結果を受け入れず合法とみなされない大統領が誕生することになる、アメリカが民主主義を信じなければ多くのことが壊れてしまう、民主主義とは社会に生きる一人一人を尊重する仕組み、市民が異なる考えを持つ人と深いつながりを持つことが重要と話した。ウィスコンシン州の教会では政治の話はタブーとなってきたが、投票が近づき危機感を強めた人たちは政治指導者たちが対立をどう乗り越えてきたか勉強会を開いた。第2代大統領となったジョン・アダムズは共和党の源流となり、アダムズを副大統領として支えたトーマス・ジェファーソンは民主党の源流となった。勉強会では、彼らは個別の問題に関して相違があったがより大きな目標に向けて協力した、今はどちらの陣営も自分たちの立場に固執していると語られ、共和党と民主党の支持者がそれぞれ意見を交換した。ハリス支持者のジョンストンさんは意見の異なる人ともっと深く話し合いたいと考え、申し出に応じたトランプ支持者のウィルキンスさんと1時間議論した。支持しない政治家でも尊重しなければならないという点だけは一致することができた。
ウィスコンシン大学の学生新聞「デイリー・カーディナル」は大統領選挙のたびに特集号を発行してきた。ことしも候補者の政治集会に足を運び、有権者の声に耳を傾けている。今回は自分たちに与えられた選ぶ権利を大切にすることも民主主義の一部だと伝えることにした。15ページに及ぶ特集は、身近なところにある意見の対立をどう乗り越えればいいのか学生一人一人に問いかける内容だった。冒頭には「今私たちの手にある民主主義はいつ失われるかわからない」という一文があった。
エンディング映像。
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