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一人の男がアメリカの価値観を動かしている。政府職員の大量解雇や予算カットを断行したマスク氏。政権を去った今、改革は続いている。新たな政党立ち上げを表明したマスク氏。熱狂的に支持する人々が現れている。イーロン・マスクは一体、何を目指しているのか。それがもたらすのは破壊か、進歩か。
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- アメリカ合衆国国際開発庁イーロン・マスク
5月はじめ、マスク氏やトランプ氏を支持する富豪たちに対し抗議デモが起きていた。仕事を失った女性がいた。女性の家では夫婦共に仕事を失っていた。子供がいるなか、収入はほとんど無くなった。改革を中心となって進めていたマスク氏が率いる政府効率化省＝DOGEというホワイトハウス内の組織。
USAIDでは1万人いた職員をほぼ全員解雇し事業停止した。あらゆる組織が対象とされ20万人以上が解雇されたとみられる。マスク氏はトランプ氏に対し大統領選挙中から政府効率化に協力したいと提案していた。36兆2000億ドルにのぼる政府の債務を削減すべきと訴えたのだ。多様性や公平性、性的マイノリティーなど主な対象とし補助金や政府契約を次々と打ち切っている。削減目標は総額1兆ドルとしている。しかし、その実態は謎に包まれている。誰がどう活動しているのか指示系統や拠点さえ明らかになっていない。大量解雇と予算カットをどのように行っているのか。標的とされている政府機関職員に探った。取材に答えてくれる官僚は見つからなかった。部署全員が解雇されたという厚生省の元管理職にたどり着いた。男性は報復を恐れていた。こうした中、DOGEの姿が記録された映像が見つかった。アメリカ平和研究所は議会が設置した特殊法人だったが、大統領令では政府機関が1つだとして廃止対象とされた。DOGEとの接触はオンライン会議から始まった。約2週間後、黒塗りの車から現れたのは28歳の青年ネイト・キャバノー。政府への経験は一切ない。独自に入手した鍵をもって現れ武装警官とともに侵入しビルを占拠。理事長らはその場で解任され強制退去させられた。その後、キャバノー氏はアメリカ国民の最大の利益になるとして500万ドル相当のビルを接収。真っ先に占拠したのがサーバールーム。ここからほぼ全員に解雇のメールを出した。メールには当時を訴えないことを条件に解決金として数千ドルを支払うと書いてあり、退職金はなかった。取材を進めていた5月中旬、突然マスク氏とDOGEメンバーがアメリカ保守系メディアの取材に応じた。アメリカ平和研究所について話したのはネイト・キャバノー氏だった。「解雇と占拠は違法」と歌えた結果、1審で違法と判決が出たが裁判は続いており今も仕事は復旧できていない。
他の複数の組織でも行われていた。政府の機密データにアクセスしている実態を内部告発した人物が取材に応じた。ベルリス氏の組織に対しDOGEはシステムの最高責任者にするよう要求し突然、従業員をシステムから排除した。不審に感じ作業の内容を確認しようとした。すると大量のデータを送った痕跡が確認された。DOGEが見ていたデータには特別な権限がない限りアクセスできない機密情報が含まれていた。DOGEがアクセスした機密データは納税者の情報、医療データや社会保障番号などにわたっている。これまではそれぞれの期間が保管してきたデータを1つにまとめ利用しようとしているのではないかとベルリス氏はみている。告発後、ベルリス氏の元には脅迫が相次いだ。今、DOGEのメンバーの全体像が明らかになりつつある。 メンバーの多くはマスク氏の企業の社員や起業家などシリコンバレーの人材。ゼロベースの手法によって科学・健康・外交など国の不可欠な機能が失われている。DOGEで活動し、途中で辞めた元メンバーにたどり着いた。イーロン・マスク氏から学びたいと参加したラビンギア氏だが、その手法は予想外のものだったという。経緯を公開したいとマスク氏に伝え実行したラビンギア氏。その後、資格が停止し一切アクセス不能になった。
自信をみせた1兆ドルの達成。しかしDOGEの公表額は約5分の1に留まっている。この金額でさえ多く取りすぎているのではないかという指摘が相次いでいる。DOGEが削減したとする金額を政府の情報公開サイトと比較した。すると数多くの間違えが見つかった。検証の結果、DOGEが321億ドルとする節約額が半分以下となった。5月末、トランプ政権を離れたマスク氏。その後、トランプ氏を強く批判しアメリカ党を立ち上げると宣言した。既存のシステムを見直すべきとする発言があった。ビットコインの年に一度の大会が開かれた。会場に集まっていたのはシリコンバレーの関係者たち。壇上にはマスク氏と長年、交流のあるテックライトと呼ばれる人々が次々と登壇した。彼らは官僚が技術の発展に介入するべきではないと主張していた。官僚による規制を撤廃し繁栄を手にするマスク氏。アメリカ党は6つの政策を取り組むとXで表明している。コリンズ夫妻は出生奨励主義者＝プロナタリスト。14人の子供がいるマスク氏。プロナタリストはマスク氏の新党が掲げる政策の1つ。夫婦は卵子を凍結し優良な卵子を選別して計画的に子供を産んでいる。2人は大学などの既存の教育システムを全く信じていないと語った。あらゆる規制を撤廃し官僚の役割をAIが担う。2人は技術による飛躍的な進歩を信じていた。
7月、マスク氏は他社を圧倒する性能だとするAIを発表した。国防総省と2億ドルの契約。全ての政府機関にAI供与可能とした。今、どこまでAIを入れるかテック企業でも議論が始まっている。マスク氏が新党立ち上げにあたって意見を求めたとされる人物がいる。思想家のカーティス・ヤービンはバンス副大統領の友人でありテックライトの教祖とされる人物。彼は現代の民主主義を否定している。ヤービン氏は官僚や大学、既存のメディアなどに大聖堂と指摘。既得権益層が支配する政治形態を壊し権力者に今より権力を集めるべきと主張している。今、改革に対する抗議の声が高まっている。全米2000か所以上で数百万人以上が参加したデモ。政権を去ったマスク氏がスペースXの従業員とともに新たな街を作っていた。この男がもたらす進歩か、それとも破壊か。それを決する未来が目前に迫っている。
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