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オープニング映像が流れた。
絵本作家のいわむらかずお。ねずみの大家族を描いた14ひきのシリーズやかんがえるカエルくんなどの絵本は海外でも人気を博している。昭和14年、東京で生まれたいわむらさん。両親は学校の先生だった。幼い頃から絵を描くのが大好きだったという。まだ自然が豊かだった杉並区で、すくすくと育っていた。高校卒業後、グラフィックデザイナーに憧れ東京芸術大学に進学する。転機となったのはアルバイトの経験だった。昭和45年、自分で売り込みをかけデビュー作「あふりかのぶくぶく」を出版。5年後には一大決心をし、東京から栃木兼益子町へ家族で引っ越した。1983年には「14ひきのひっこし」を発表。個性あふれるねずみの大家族の暮らしぶりを温かな筆使いで描いた作品である。大勢で食卓を囲む場面はいわむらさん一家の日常の風景をモデルにしていた。またいわむらさん自ら読み聞かせをしている映像が残されていた。絵本の特徴はねずみたちを擬人化して描く一方、背景の自然を細かく描き込みリアリティを追求しているところである。実際に雑木林へ行き、ねずみの目線になるよう低い姿勢でスケッチする。次にラフ原稿を書き、本のように綴じる。続いて水彩絵の具やパステルを使って着色し原画を仕上げていく。14ひきのシリーズは12作品が描かれ、国内外で1500万部を超える人気作となった。
その一歩でちょっと変わった作品も手掛けている。「かんがえるカエルくん」で「こころはどこにあるの?」といった哲学的な問題を考える漫画風の絵本である。創作活動を続ける中で、いわむらさんには気がかりなことがあった。子どもたちに変化を感じるようになったという。そこで1998年に「いわむらかずお絵本の丘美術館」をオープン。館内には作品の原画などが展示され、14匹のシリーズなどの世界を体感できる。一歩外に出ると、絵本に描かれている自然を直に体験できるようにした。来館した子どもたちを自ら引率して、雑木林を案内することもあった。他にも「トガリ山のぼうけん」などを執筆し作品じゃフランスやドイツ・台湾でもロングセラーになっている。2014年にはフランスの芸術文化勲章「シュバリエ」を受章した。自然と共生することの大切さを子どもたちに伝え続けた85年の生涯だった。
エンディング映像が流れた。