ひきこもり支援は相変わらず思うようには進んでいなかった。どんな場所をつくれば出てきてくれるのか。悩むまゆみたちの元に突然思いがけない人物が現れた。松原卓也はひきこもり状態だったが社協の職員募集に申し込んできた。松原はかつて木材加工の会社で10年働いていたが病気のため退職。回復後、就職活動をしたが長引く不況の影響で何度受けても不採用。松原の話を聞いたまゆみはある経験を思い出していた。子育てに専念していた頃、自分は社会から取り残されていると感じたことがあった。しかし仕事を始めた時、町民たちに「ありがとう」と声をかけられた。たったそれだけの言葉が疎外感を消してくれた。特別な人だと決めつけていた自分の偏見に嫌気がさした。まゆみは「働くことができる食事処をつくるのはどうか」と決意。食堂なら誰もが自分なりの役割を見つけ出せるかもしれない。報酬は僅かだが本格的な就職に向けて訓練ができる施設をつくろう。しかし町民たちからは反対の声が上がった。悩むまゆみの背中を押したのは3人の子どもたちだった。
ひきこもりの人たちの施設の準備は急ピッチで進んだ。名前は「こみっと」。秋田弁で「親しく人が寄り集まる」。集められたのは社協の採用面接を受けに来た松原を含め4人。「オープンセレモニーで150人の来賓に手打ちそばを振る舞おう」。彼らの可能性を町民に見せたかった。しかし全員が素人。見よう見まねで作るが1本の麺にならない。それでも投げ出さなかった。一緒にそば打ちを行ったのは若手職員の門田。ついに迎えたオープンセレモニーの日。辛うじてつながっている麺を何とかかき集め150人分を用意することができた。しかしこの勢いは長続きしなかった。そば打ちに参加した松原がいつの間にか姿を見せなくなっていた。食事処で働くことを希望する者も全くいなかった。またしてもまゆみたちは答えが見えなくなっていた。
ひきこもりの人たちの施設の準備は急ピッチで進んだ。名前は「こみっと」。秋田弁で「親しく人が寄り集まる」。集められたのは社協の採用面接を受けに来た松原を含め4人。「オープンセレモニーで150人の来賓に手打ちそばを振る舞おう」。彼らの可能性を町民に見せたかった。しかし全員が素人。見よう見まねで作るが1本の麺にならない。それでも投げ出さなかった。一緒にそば打ちを行ったのは若手職員の門田。ついに迎えたオープンセレモニーの日。辛うじてつながっている麺を何とかかき集め150人分を用意することができた。しかしこの勢いは長続きしなかった。そば打ちに参加した松原がいつの間にか姿を見せなくなっていた。食事処で働くことを希望する者も全くいなかった。またしてもまゆみたちは答えが見えなくなっていた。
住所: 秋田県山本郡藤里町藤琴字三ツ谷脇110-1