茨城・つくば市の「屋台ラーメン 桜」。店主は内田征男さん(79)。6年前からパチンコ店の駐車場を借りて営業している。一番人気は「しょうゆラーメン」。鶏ガラと野菜から出汁を取ったさっぱりとした味わいのラーメン。午後6時、母親と中学3年生の親子が来店した。息子が第一志望の高校受験を控えていて息抜きと合格祈願も兼ねて連れてきたという。「県立に行きたい」と話し、その理由については「親に迷惑がかからないから」と答えた。家計の状況を考えた選択に店主も「頑張ってよ」とエールを送った。客の目的は味以外に店主の人柄。そこにやって来たのは20代の新婚夫婦。1年前にこのラーメンを食べてから大ファンになったという。幸せそうな新婚生活を送っているように見えるが、家事の話題になると雰囲気が一変した。家事の負担が夫に比べて圧倒的に多いと不満を漏らす妻。妻が店主に助けを求めると「自分たちで結論を出した方がすべてにおいて納得がいくでしょ」と。ところが2人が何故かにこやかな表情に。黙ってひたすら話を聞く、そして余計なアドバイスはしない。そんな店主の姿勢にすっかり仲直りした夫婦は友人の車で帰っていった。午後7時、1人の男性の姿があった。いつも開店直後から閉店の午前0時までずっとお酒を飲んでいるという常連客のようだ。ラーメンを食べずにお酒を飲むのが楽しみだというが事情があった。何故か財布にはボロボロになった娘の写真が。2人の子どもに恵まれたものの自身の浮気が原因で30代で離婚。息子は自分が引き取り、娘は妻の元へ。今も寂しさと後悔は消えず夜な夜なラーメン屋台にやって来るという。それでも「仲良くなって話をするのも面白い」と話した。この日も初めて会った客と意気投合したようで男性に笑顔が戻った。