山田町が募集したメッセージの中に「天国から見てだめ出しをください」と誰に宛てたものか分からない一通があった。誰を思い、書いたのか、番組が取材をお願いすると、快く応じてくれた。メッセージを寄せた後藤夕香里さん。山田町で生まれ育った彼女は、地震当日、娘の結婚式で町から離れていたため、家族3人、全員無事だった。彼女が送った相手は幼なじみだという河西典子さんへ宛てたものだった。今回、メッセージを書いたのは、誤解が解けないまま、彼女と会えなくなったことをずっと後悔しているからだと教えてくれた。あのとき、母親と孫2人で、自宅にいたという河西さんは震災から半年後に無言の帰宅をしていた。家がはす向かいで同い年、優しく静かで、なんでもできたのりちゃんは、そばにいるのが当たり前の存在で、2人きりで旅行に行ったこともあったという。結婚後、夫が経営するのりの卸の手伝いに、実家のことや孫の世話と、忙しい毎日を送っていた。一方の後藤さんも、夫の仕事を手伝いながら、合間を縫い忙しくも充実した日々を送っていた。後悔のきっかけは、地震の半年ほど前、のりちゃんの所でのりを買おうと訪ねたときのことだった。心通じていると思っていた人からの、思いがけないひと言が、胸の奥に刺さったまま、のりちゃんは二度と会えない人になってしまった。小さな後悔が大きな後悔になったから、宛先に選んだという。河西さんのいない15年。ふるさと、山田町で自分なりに頑張ってきた姿を、幼なじみは見ていてくれただろうか。後藤さんが向かったのは。河西さんの夫、寛太郎さんの家。震災後は足が向かなかったというこの家を、後藤さんが訪ねるのは今回初めてだった。幼なじみとの静かな再会。後藤さんは少しほほえんだように見えた。
