塩焼きや刺し身などで食される高級魚「ノドグロ」の正式名称は「アカムツ」。口を開けると奥に見えるノドが真っ黒なことからこう呼ばれる。全国の漁獲量は年間1,600トン前後。山口県や島根県など日本海西部で約9割を占める。富山県は年間約20トンで北陸3県の中では最も少ない。富山県水産研究所の福西さんはアカムツを水槽内で自然産卵させる研究に取り組んだ。深海に住むノドグロは光や音に敏感なことから苦戦、試行錯誤の末に3つの工夫が生まれた。1つ目は「暗さ」。水槽を黒い布で覆って深海の環境を再現した。赤外線カメラの映像では暗闇を泳ぐノドグロの姿が確認できた。2つ目は「エサ」。富山湾の深海を再現してホタルイカをエサにした。3つ目は「水温」。150mの深海に生息するノドグロは産卵期になると70~100mの深さまで移動する。富山湾から汲み上げた冷たい深層水と水面近くの暖かい海水を混ぜることで産卵期の水温を再現した。3つの工夫により去年初めて水槽内で卵の孵化に成功。稚魚も順調に育っている。富山湾がノドグロの一大産地になる日が訪れるかもしれない。