二酸化炭素の25倍を超える温室効果があるとされるメタンガスは、稲作が国内で最大の排出源。その排出を抑える取り組みを取材。乾田直播は乾いた田んぼで米を作る新しい農業。メタンガスは二酸化炭素の25倍の温室効果があるといわれている。つまり、メタンが発生することで地球を暖めるスピードが速くなる。日本で1年間に排出されるメタンの44%が、私達が食べる米を作る田んぼから出ている(環境省より)。土の中にあるメタンを発生させる菌は、酸素が少ないと活性化する特徴がある。従来の水田のように水を張ると酸素を遮断し大量のメタンが生成される。そこで救世主となるのが乾田。水がほとんどないため土の中まで酸素が行き渡る。その結果、菌の活性化を防ぎメタンの生成を大幅に減らすことができる。ただ、メリットがあるにもかかわらず日本ではほとんど行われてこなかった乾田での米作り。それを可能にしたのが技術革新で生まれた栽培方法。ビールを生産する過程でできるビール酵母を使った肥料。種もみに吹きかけ、田んぼにまくことで驚くべき効果が生まれる。水とビール酵母で植物の根の成長速度を比べた実験。ビール酵母のほうが根が育っていることがわかる。ビール酵母の肥料を与えると稲が病原菌に感染したと勘違いし、病気に対抗しようと根の成長が促されるそう。また、菌根菌という植物の根に感染する菌の一種を与えることで菌糸を伸ばし、栄養を集めやすくなる。寒すぎて米作りに不向きだった北海道網走でも、ビール酵母と菌根菌を使うことで米の収穫に成功している。乾田のメリットはほかにも。水田では欠かせない田植えや水の管理などの必要がない。この農家では設備コストが4割、労働時間は7割減ったそう。