ベトナム戦争の米軍撤退から50年となる。ベトナムの各地をバイクで巡るのはダン・アイ・ベトさん。全国をまわって戦争で夫や子どもたちを失った母親の肖像画を描き続けている。ベトナム戦争では兵士85万人以上、民間人200万人以上が犠牲となった。15歳で北ベトナムのゲリラに加わったベトさんは従軍画家として激戦地にも足を運び、その際に目の当たりにした夫や子どもを失って悲しむ母親の姿が脳裏に焼き付いているという。取り組みを始めて13年余り、母親たちの高齢化が進む中で1人でも多くに会って表情を残しておきたいと旅を続け、これまでに3000人近い母親たちを描いてきた。ベトさんの訪問はつらい過去を抱えてきた母親たちにとっても気持ちを解放できる特別な時間となっている。