アパルトヘイトから解放されて長い年月が経過した南アフリカだが、所得格差は30年前に比べて拡大。上位10％にあたる富裕層が総所得の65％を有しており、世界で最も不平等な国とされている。かつてのビジネス街ではビルが放置されて貧困層が住みつき、ハイジャック・ビルとなっている。エレベーターが設置されていた部分はゴミで埋め尽くされ、今年8月には大規模な火災で多くの犠牲者が出た。
通称ハイジャック・ビルでの火災を逃れて慈善団体に身を寄せている人もいるが、悲惨な光景は脳裏に焼き付いたまま。住人のシンピウェ・シトレさんは「政治家が来ても犯罪者扱い、無知で投票に行かない人間とみなす」と話して、政府の支援を訴える。1990年代から顕在化して長年放置されている問題は、ビルを取り仕切る犯罪組織による警察や政治家との癒着も背景にあるようだ。