オウム真理教による地下鉄サリン事件から明日で30年となる。警察はオウムの施設への家宅捜索を数か月前から検討してきたが実施予定の2日前に事件は発生した。事件を未然に防ぐことはできなかったのか。当時、警察庁の刑事部門トップだった人物が証言した。元警察庁刑事局長・垣見隆は、教団の施設に対して大規模な捜索を3月22日に行う方針を固めていた。ところがその2日前に事件は起こる。地下鉄サリン事件からさかのぼること9か月。サリンの製造に成功したオウム真理教がその威力を試そうと長野県松本市の住宅街で散布する松本サリン事件が起きる。当初、警察は事件の第一通報者で自身もサリンの被害を受けた男性を犯人視。大きなミスを犯す。山梨県旧上九一色村にはサティアンと呼ばれる教団施設が数多く作られ住民は危険性を訴え続けていた。ここで松本サリン事件の直後に悪臭騒ぎが2度起きたが、警察は異変に気付くことができなかった。松本サリン事件から5か月が経ったころ、サティアン周辺の土壌からサリンの生成時にできる残留物が検出された。垣見氏は教団の大規模な捜索に向け検討を始めた。12月15日、警察庁長官室で捜索計画についての会議が持たれた。出席者は国松長官をはじめ関口次長や杉田警備局長ら最高幹部。結論次第では、地下鉄サリン事件を防げた可能性もあった。しかし、相手が宗教団体ということもあり慎重な意見が相次いだ。