フロリダ州南部に位置するマイアミ。アメリカ最大のキューバ移民街「リトル・ハバナ」ではラテンのリズムが昼下がりのカフェに響き渡る。キューバから300kmほどの距離に位置するマイアミには現在14万人を超えるキューバ人が暮らしている。その多くは共産党独裁による社会主義体制から逃れてきた人たち。点在するニワトリのオブジェは自由を手に入れたキューバ人の不屈の精神を強調している。社会主義体制が70年近く続くキューバ。統制経済の失敗と輸入物価の高騰で国民の暮らしが困窮している。そこに追い打ちをかけるのがアメリカからの圧力だ。今年、社会主義国家・ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束したトランプ政権。南北アメリカ大陸を中心とした西半球から社会主義の影響を排除するキューバを次のターゲットにしている。キューバ移民を親に持つルビオ国務長官も社会主義体制の転換に強い思いを表明している。そのトランプ政権は1月以降、経済制裁として事実上の会場封鎖を実施し、キューバへの原油供給をほぼ遮断した。エネルギーを輸入に頼ってきたキューバでは今月に入ってからも3度の大規模停電が発生するなど危機的なエネルギー不足が続いている。わずかな明かりだけが灯る夜の街で国民は鍋をたたき必死に抗議する。こうした事態にキューバ・ロドリゲス外相は7日、国連での演説で「アメリカの行動は戦争行為」だと強く批判した。アメリカの圧力はこうした経済制裁だけにとどまらない。司法省は5月、1996年のキューバ軍による民間機撃墜事件を巡り、当時キューバの国防相だったラウル・カストロ元国家評議会議長を殺人罪で起訴。30年も前の事件で元指導者を起訴したことは軍事作戦が近いとの見方につながった。実際、アメリカのCBSは今月、アメリカ軍がキューバへの軍事作戦を検討していたと報道。数千人の部隊による強襲作戦の可能性もあったという。リトル・ハバナの住民の間では複雑な感情は渦巻いている。キューバ側の姿勢には変化も起きている。6月には国営企業を民営化するなどこれまでの社会主義経済を大きく改革する計画を打ち出した。トランプ政権に歩み寄ったかたちだがアメリカ側の態度に変化はなく、状況改善の兆しはないのが実情。両国の緊張が急激に高まるなか、キューバ移民たちは出口の見えない祖国の窮状を案じている。
