2017年6月にロンドンにあるグレンフェル・タワーで火事が起きた。1974年に建てられた地上24階の高層建築で、3階までがオフィスなどの複合フロア、4階から上が居住フロアとなっていた。火元は老朽化した冷蔵庫でプラグやコンセントの接触不良が出火原因として考えられた。キッチン火災は程なく鎮火されたが、窓枠を伝って外へと流れ出ていた炎がマンションの外壁で広がり始めていた。隣人から火災が起きたことを知ったマルシオ一家は窓の外を見たが、火元の部屋とは逆の部屋だったため数台の消防車が見えるだけだった。マルシオは状況が掴めなかったため念の為通報したが、自室に待機するよう言われた。イギリスでは火災が起きた場合室内待機が原則だった。イギリスの建築基準法では、炎が火元とは別の区画や共用部分に広がらないよう厳格な防火対策が定められている。すぐに全員を避難させる必要はなく、火元の階の住人だけを避難させるのが基本方針だった。16階のエディは火元の部屋の近くの知人から連絡を受けて部屋から逃げるよう言われ、部屋を出た。火元の部屋の玄関から漏れた煙は非常階段に侵入して上昇。階段一帯に蔓延していた。
