技能実習制度を利用して日本に来ている外国人の数40万人。きょう、この技能実習制度にかわり、新たに育成就労制度を設けることを柱とする、改正出入国管理法などが参議院本会議で成立。これまでの技能実習制度は日本で技術を習得するという国際貢献の看板が掲げられていた。しかし実態は日本の労働力不足を補っているとして、目的と実態がかい離しているという指摘があった。そこで行われたのが今回の改正。新しい育成就労制度では労働力として向き合い、労働者としての人権を守るとしている。これまで技能実習で日本に滞在できるのは最大5年だったが、育成就労は3年で技術の習得を目指す。そして専門性の高い特定技能へとステップアップしていくことで、より長く日本で働けるようになる。さらに働く場所を変える転籍も一定の要件のもと可能になった。これまでは原則働く場所を変えられず、劣悪な職場環境から実習生が失踪するケースも相次いでいた。こうした改正に技能実習生の支援に当たってきたNPO団体などからは、期待を寄せる声も上がっている。一方、懸念も指摘されている。例えば転籍。これまでも、もともとある在留資格、特定技能で認められていたがトラブルも起きていた。外国人労働者の支援に当たるNGO。この日、転籍したのに働けないと訴えるベトナム人たちのもとを訪ねた。特定技能の資格を持つ30代の女性。ことし3月に山梨県にある菓子メーカーに転籍したが、実際に働けるようになったのは今月に入ってからだった。新しい工場の建設工事が遅れ受け入れ体制が整わないなどとして最大で88人、長い人で3か月もの間待機させられていた。女性も3か月の間、給料が支給されなかった。在留資格で許可を得た会社以外で働くことができないためアルバイトもできず、ぎりぎりの生活を送っていた。菓子メーカー「シャトレーゼ」はNHKの取材に対し、今後待機させた全員に休業手当を支給する方針だとしたうえで、特定技能の皆様や社会にご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げる。再発防止策を通じて、安心して働いていただける環境構築を進めていきますとコメントしている。NGOで外国人労働者の支援に当たっている神戸大学の斉藤善久准教授。こうした相談は、ほかの企業で働く人からも相次いでいる。1日に寄せられる相談は40件ほど。特に多いのが転籍を巡るトラブル。中には企業側などが転籍しないよう妨害するケースもある。斉藤准教授は、新しい制度でも、同じような問題が起きる可能性があると指摘。今回新たに設けられた育成就労制度では、外部の監査人を置く監理支援機関が受け入れ外国人を支援する役割を担うほか、転籍の際に悪質なブローカーが仲介しないよう当面民間企業ではなく、ハローワークなどが中心となって対応することになる。一方、企業側にとっては転籍で地方から賃金が高い都市部への人材流出が加速する可能性もある。日本国際交流センター・毛受敏浩執行理事は「世界的に人材獲得競争が厳しくなる中、どうすれば外国人にとって魅力的な国になるかを政策的に考え、社会全体で受け入れ体制を整えていくことが重要」としている。今回の改正法では、故意に納税などを怠った場合などに永住許可を取り消すことができる項目も盛り込まれ論点となった。改正法は3年後の2027年までに施行される。サポートする仕組みなど、よりよい制度となるよう議論を深めていく必要がある。