ヌサンタラの中心部に今年完成した公務員宿舎。別の島で地方公務員として働いていたリンダさんは、おととし首都移転事業を担う政府機関「ヌサンタラ新首都庁」に転職した。移転事業を担う公務員のために、通勤用のバスは無料で運行されている。政府庁舎は揃いつつあるものの住民はまだ少なく、人通りはほとんどない。リンダさんが勤務するヌサンタラ新首都庁の職員は約1,200人で、政府機関で唯一移転が完了した。生活に必要な施設も徐々に完成し、仕事帰りにはスーパーで買い物もできるようになった。しかし今、移転計画の先行きを疑問視する声も上がり始めている。背景にあるのは大統領の交代で、政権を引き継いだプラボウォ大統領は去年ヌサンタラで行った独立記念日の式典会場をことしジャカルタに戻した。予算の見直しを行う過程で事業が停滞したこともあり、事業計画に遅れが目立つようになった。地元の事業者にも影響が出ており、4年前に開業したゲストハウスでは政権交代で売り上げがピーク時の3分の1以下にまで減ったという。事業費の支払いをめぐるトラブルも相次いでいる。新たに移り住んだ公務員は、少しでも早い事業の進捗を望んでいる。リンダさんは2人の娘と離れて暮らしていて、教育環境が整ったら呼び寄せようと考えている。首都移転を担当するヌサンタラ新首都庁のバスキ長官は、事業の遅れが予算の見直しに起因することを認めた上で「事業の継続」を強調した。
