2025年10月21日放送 4:15 - 5:00 NHK総合

国際報道
2025 インドネシア「首都移転」のいま

出演者
辻浩平 藤重博貴 酒井美帆 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像が流れ、出演者があいさつ。

ニュースラインナップ

「フランス 数々の至宝が…”奪還に全力”」「アメリカ 記者も挑戦 人事評価するAI」「アメリカ 供与に慎重 首脳会談控え配慮か」「インドネシア首都移転 優先度低下?」というラインアップを伝えた。

(ニュース)
イスラエル軍 ハマス拠点を攻撃 停戦後 最大規模の被害か

ガザ地区では停戦の維持に向けて不安定な情勢が続いている。18日、ガザ地区中部のがれきの処理施設を視察した国連開発計画のヤコシリアーズ特別代表は「がれきの撤去には5年以上かかる」という見通しを示した。再建に向けた取り組みが始まる一方、イスラエル軍は19日ガザ地区南部で部隊が攻撃を受け兵士2人が死亡したとしてハマスの拠点、数十か所を攻撃したと発表。ロイター通信は、一連の攻撃で子どもや女性を含む少なくとも26人が死亡したと伝えていて今回の停戦後最大規模の被害とみられる。イスラエル軍は、ハマスが停戦合意に違反したことへの報復措置だとしているがハマスは攻撃への関与を否定し停戦合意を順守しているとの声明を発表した。停戦の維持に向け不安定な情勢が続く中、アメリカのトランプ大統領は「ハマスとの間で確実に平和的対応をしていく」と述べた。バンス副大統領はトランプ政権の高官が数日中にイスラエルに向かう方向で調整していてみずからが行く可能性もあると明らかにした。

辻’s Angle
トランプ政権 合意維持に奔走 ガザ 停戦合意の行方は

ガザでの停戦合意は早速、岐路に立たされている。アメリカのトランプ大統領は停戦を維持するため早速、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使、自らの娘婿ジャレッド・クシュナー氏の2人をイスラエルに派遣した。。トランプ大統領は合意が成立した際の演説でウィトコフ氏を往年の外交官キッシンジャー元国務長官に例えている。キッシンジャー氏はアメリカの元国務長官でアメリカの外交政策に大きな影響を与えたレジェンドとも言える人物だ。2人は今日イスラエルに到着し、このあとネタニヤフ首相と会談し停戦を維持するよう働きかけるとみられる。トランプ大統領は自身のレガシーにしたいだけに、停戦合意が破られるわけにはいかないという意図が見える。アメリカのニュースサイト「アクシオス」は停戦合意を受けて大規模に再開されていた人道物資の搬入を一時停止したネタニヤフ政権が直後に方針転換。今日から搬入を再開すると発表した。この背景には、和平計画を維持したいアメリカからの圧力があったとも報じられている。バンス副大統領もあすイスラエルを訪れ、停戦維持に向けた働きかけを強化すると報じられている。一方、昨日のイスラエル軍による大規模な攻撃再開はいかに、たやすく停戦が崩れうるかを浮き彫りにした。危うい合意をつなぎ止める鍵はアメリカの圧力で、トランプ政権の外交力が試される局面となっている。

米中摩擦も懸念 中国経済の行方は 「四中全会」きょう始まる

厳重な警備が敷かれた北京で中国共産党の重要会議「四中全会」が今日から4日間の日程で始まった。主要な議題は、来年からの経済政策の方針を示す5か年計画。長引く不動産不況やアメリカとの貿易摩擦への対応などを巡りどのような方針を示すのかが焦点となっている。そんな中、今日発表された7月から先月までのGDPの伸び率は前の3か月を下回り景気の減速傾向が鮮明になった。主な要因が不動産不況を背景にした内需の停滞やトランプ政権の関税措置の影響。中国は今月、レアアース関連の輸出規制を強化すると発表。これに対し、トランプ大統領は中国からの輸入品に100%の追加関税を課す考えを示し米中の貿易摩擦が再び激化するのではないかとの懸念が強まっている。

米中の貿易摩擦の行方に中国企業からは懸念の声が上がっている。広州で先週始まった国際見本市。中国製の家電や機械を外国企業に売り込もうと3万を超える企業が出展している。台所用品を扱う出展企業の1つは東南アジアに工場を建設中で関税の影響を和らげるねらいがあると話していた。またコーヒーメーカーなどを扱う別の企業は国内で売り上げ好調だという持ち運びできる小型の製品をアメリカに売り込もうとしていたが「しばらく待つ必要がある」と話していた。以前は、輸出先の7割がアメリカだったがトランプ関税の影響で3割減少。それでもアメリカ市場は重要だという。

LIVE>> 北京 「固定資産投資」マイナスに/「四中全会」注目点は

米中の貿易摩擦への懸念企業の間でも強まっている。中国とアメリカは、5月に互いに課していた関税を大幅に引き下げたが、一部はまだ残っている。先月の中国からアメリカ向けの輸出は27%、輸入も16%減少した。東南アジアなどへの輸出で減少分をカバーできているという見方もあるが、企業の警戒感は確実に強まっている。実際、今日の中国のGDPの発表では生産設備などへの投資を示す固定資産投資が新型コロナの感染拡大の影響を受けた2020年8月以来のマイナスに転じた。不動産不況を背景にした内需の停滞に加え貿易摩擦への懸念が中国経済の重荷となっている。

「四中全会」では内需拡大に向けた抜本的な対策が示されるかが焦点となる。習近平指導部はアメリカに対抗するためにも国内経済の足腰を強くしようと躍起になっているわけなのだが効果的な対策を打ち出せていない。「四中全会」では内需停滞の根底にある厳しい雇用情勢の改善や社会保障制度の拡充など構造的な問題について、どこまで踏み込んだ議論が交わされるのかも注目だ。一方、米中の間では近くトランプ大統領と習近平国家主席による首脳会談が予定されている。先週ベッセント財務長官と何立峰副首相がオンラインで会談し早期に次の貿易協議を行うことで合意した。貿易摩擦再燃への懸念もくすぶる中、高官による協議や首脳会談を通じて進展はみられるのか。内憂外患の状況に陥っている中国経済にとって重要な局面にさしかかっている。

WOW!The World
ルーブル美術館で宝石類 強盗

フランスパリのルーブル美術館で19日午前9時半ごろ、作業員を装い貨物用リフトを使って2階の窓から侵入した4人組の集団が警備員らを脅して宝石類を盗みスクーターで逃走。強盗事件は僅か7分間の犯行だったという。盗まれたのはナポレオン3世の妻のティアラなど9点の宝石類。このうちの一つ、冠は逃走時に落としたとみられ破損した状態で発見された。美術館はきょうも休館となっているが、現地では、警備態勢への疑問の声が上がっている。

バーベキュー「ブラーイ」で記録に挑戦

南アフリカで名物のバーベキュー「ブラーイ」に参加する人数でギネス世界記録に挑戦した。これまでの記録は日本で達成された2220人。今回はおよそ2500人が集合し同時に大量の肉を焼いて食べた。南アフリカでは、この日は多様な伝統文化を祝う祝日で「ブラーイの日」と呼ばれている。

ハロウィーンに無料サービス

ハロウィーンといえば子どもたちが近所を回ってお菓子をもらうのが恒例。その日を前にチョコレートで知られる菓子メーカーが3年連続となる大サービスを発表。当日、お菓子を配り終えてしまった家庭に無料でおかわりを届ける。宅配会社と提携し全米各都市で実施するという。

野生生物写真のコンテスト 受賞作発表

イギリスのロンドン自然史博物館が主催する野生生物の写真のコンテスト。今年、大賞に輝いたのはアフリカ南部ナミビアの廃虚に現れたハイエナの写真。10年かけて撮影に成功したということでタイトルは「ゴーストタウンの訪問者」。一方、10歳以下の部門の受賞作は巣の中で丸まっているクモ。世界中から寄せられた6万枚以上の写真から選ばれた100点が博物館で展示されたあと、世界各地で展示会が開催される。

(ニュース)
ゼレンスキー大統領 米のトマホーク供与見送りは“ロシアへの配慮”

アメリカの有力紙「ワシントンポスト」は今月16日にロシアのプーチン大統領がトランプ大統領と行った電話会談の詳細を報道。プーチン大統領がウクライナでの停戦条件として東部ドネツク州全域の割譲を要求したという。また、その見返りとして南部のザポリージャ州とヘルソン州の一部地域の支配を放棄する考えを示したとしている。ドネツク州とルハンシク州の2州のロシア系住民の保護という侵攻当初の目的の達成は譲れないとする姿勢を示したとみられる。さらに、今月17日に行われたアメリカとウクライナの首脳会談の内容も明らかになった。ゼレンスキー大統領は会談でトランプ大統領が巡航ミサイルトマホークの供与を見送ったことについて「私の考えでは、ロシアとの緊張を高めたくないのだろう」と述べ、米ロ首脳会談を控えロシアへの配慮を示したためだという見方を示した。そのうえで、ロシア側は引き続きウクライナ東部2州の割譲を求めているとしたうえでこうした要求は受け入れられないという立場をアメリカ側に重ねて伝えたとしている。こうした中、ロシア国防省は19日、ウクライナ東部のドネツク州や南部のザポリージャ州で新たに集落を掌握したと発表。ウクライナ軍はロシア国内の石油精製施設などを相次いで攻撃したと発表した。トランプ大統領とプーチン大統領は今後ハンガリーで首脳会談を行う予定で停戦や和平に向けた交渉がどう進むのか注目される。

Manday Biz
アメリカ “職場でAI” 最前線

先月下旬に開かれた大型イベント。企業によるAI投資が加速する中、AIはどこまで人に代わって仕事をこなすことができるのか。ある企業が開発したのは「AI面接官」で、初期段階の面接をAIに任せることで時間を短縮し、より効率的に適した人材を見つけられるという。また別の企業では「人事部」のような機能を担うAIを開発している。従業員の給与計算や休暇申請、業績評価までAIが行う。一方こうしたAIの導入によって「人の仕事が奪われるのではないか」との懸念もある。これについて専門家は「雇用を奪うのではなく、AIの活用を前提とした組織の改編が行われる」と指摘する。

タイ “スピード重視” 景気刺激策

タイでは隣国・カンボジアとの国境問題への対応をめぐり、8月に首相が失職し新政権が発足したばかり。その新政権は、スピード重視である景気刺激策を打ち出している。16歳以上の国民2,000万人に1人あたり最大約1万円分の食事・買い物の支払いを補助するというもの。対象は屋台やレストランでの食事、食料品や生活雑貨などの買い物、マッサージなど。1日あたり約900円を上限に代金の半額が補助される仕組み。タイではトランプ政権の関税政策の影響で経済の減速が懸念されているが、こうした刺激策によってGDPを0.3~0.4%押し上げる効果を見込んでいる。掲げるのは「Quick Big Win」“素早く大きな成果”というスローガン。政権発足から約1カ月の短期間で実施に至った。新政権は少数与党で、最大政党から支持を得る条件として議会を来年1月までに解散し選挙を行うことを約束している。

中国 “激安スーパー” 参入相次ぐ

中国では大手IT企業などが格安スーパー事業に参入する動きが相次いでいる。IT大手「美団」は、8月末に浙江省に格安スーパー1号店をオープンした。中国メディアによると「2か月で5店舗をオープンしていて、将来的には1,000店舗を目指す」としている。またネット通販大手の「京東」では、8月中旬に江蘇省や河北省で格安スーパー5店舗を一斉にオープンした。さらに最大手の「アリババグループ」も傘下に持つ食品スーパーで、ディスカウント事業を強化する方針を打ち出している。各社とも出前サービスやネット通販によるサプライチェーンがあるため、豊富な商品を安く仕入れるノウハウを持っている。さらに「手に取って品質などを確認したい消費者のニーズを取り込める」として、ネットと店舗を融合させる販売戦略に乗り出している。一方で中国の先月の消費者物価指数のうち食品は4.4%のマイナスだった。デフレへの懸念が一段と強まりかねず、今後の動向が注目されている。

イギリス スパークリングワイン急成長

ロンドン中心部で開かれている、イギリスワインのテイスティングイベント。英国各地から80を超えるワイナリーが参加し、イギリスで人気のスパークリングワインがブースに多く並んでいた。フレッシュな風味とほどよい酸味が特徴で、近年売り上げを伸ばしている。成長の背景には温暖化があり、イギリスの気候がよりワインの生産に適したものになってきているという。去年のぶどう畑の面積は約4800ヘクタールと、約10年で2.4倍余に増えた。業界団体は今後のさらなる成長に期待を寄せている。

SPOT LIGHT INTERNATIONAL
首都移転に暗雲が

インドネシアの首都移転事業について。現在のジャワ島のジャカルタから、約2000キロ離れたカリマンタン島のヌサンタラに首都を移そうとしている。主な理由は、人口と経済の偏りをなくすため。人口8億8,000万の半数以上がジャカルタがあるジャワ島に住んでいて、交通渋滞や大気汚染が深刻化している。インドネシア政府はヌサンタラに神奈川県とほぼ同じ約25万ヘクタールの土地を用意し、新しい首都の建設に着手した。総事業費4兆円余にのぼる威信をかけた一大国家プロジェクトで、計画では2045年までに首都移転を終える予定だった。しかしここに来てにわかに暗雲が立ち込めている。

インドネシア 首都移転の現在は

ヌサンタラの中心部に今年完成した公務員宿舎。別の島で地方公務員として働いていたリンダさんは、おととし首都移転事業を担う政府機関「ヌサンタラ新首都庁」に転職した。移転事業を担う公務員のために、通勤用のバスは無料で運行されている。政府庁舎は揃いつつあるものの住民はまだ少なく、人通りはほとんどない。リンダさんが勤務するヌサンタラ新首都庁の職員は約1,200人で、政府機関で唯一移転が完了した。生活に必要な施設も徐々に完成し、仕事帰りにはスーパーで買い物もできるようになった。しかし今、移転計画の先行きを疑問視する声も上がり始めている。背景にあるのは大統領の交代で、政権を引き継いだプラボウォ大統領は去年ヌサンタラで行った独立記念日の式典会場をことしジャカルタに戻した。予算の見直しを行う過程で事業が停滞したこともあり、事業計画に遅れが目立つようになった。地元の事業者にも影響が出ており、4年前に開業したゲストハウスでは政権交代で売り上げがピーク時の3分の1以下にまで減ったという。事業費の支払いをめぐるトラブルも相次いでいる。新たに移り住んだ公務員は、少しでも早い事業の進捗を望んでいる。リンダさんは2人の娘と離れて暮らしていて、教育環境が整ったら呼び寄せようと考えている。首都移転を担当するヌサンタラ新首都庁のバスキ長官は、事業の遅れが予算の見直しに起因することを認めた上で「事業の継続」を強調した。

LIVE>> ジャカルタ プラボウォ大統領の“本気度”は/プラボウォ大統領 なぜ消極的/国民の受け止めは

インドネシア・ジャカルタより、ジャカルタ支局長の吉元明訓が中継でレポート。現在のプラボウォ大統領は首都移転に関心が薄い印象で、就任以来一度もヌサンタラを訪れていない。去年の就任演説でも一言も触れず、地元メディアから注目を集めた。代わりに重点的に進めているのが子どもたちの学校給食の無償化で、首都移転は優先度が高くないことが伺える。その理由には財政的な制約があり、学校給食の無償化にはかなりの予算がかかる。貧困対策になり国民受けしやすい給食無償化を優先したいというのが政権の本音。今月初旬から中旬にかけ最新の世論調査が行われ、首都移転への賛否をたずねたところ「賛同する」が44%、「賛同しない」が43%とほぼ同じになった。莫大な予算に見合った国民からの支持が得られるかどうか、政権としては今後も慎重に見極めながら事業の進捗をコントロールしていくものとみられる。

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