韓国・ソウル市内で目立つスポーツジムの看板。たくましい体つきのモデルの写真が使われている。韓国では健康志向の高まりなどを受けてジムやパーソナルトレーニングのスタジオなど10年間で2倍以上に急増。ジムの利用者にトレーニングをする理由を聞いてみると「男性として健康的な体が魅力的」「体がたくましくなるのを鏡で見て感じた。彼女も喜んでいる」などの声があった。その一方で筋肉を大きくすることのために使うステロイドなどの違法な売買があとを絶たない。筋肉増強剤は心臓や肝臓への悪影響、性機能障害など深刻な副作用が報告されていて、韓国では医師の処方なしで所持したり売買したりすることは法律で禁じられている。それでも大きな筋肉をつけた魅力的な体をより簡単に手に入れたい。ソウル市内のジムの映像にはトイレの奥の配管スペースに大量の注射器が。筋肉増強剤を隠れて注射しステられたものとみられる。かつて筋肉増強剤を使用したという男性が取材に応じた。子遠の頃から痩せた体形をにぼしとからかわれていた男性。30代になったころこのままではいい仕事や良い結婚相手が見つからないのではないかと体を鍛え始めた。そして、5年前個人指導のトレーナーに勧められたのは筋肉増強剤だった。月に1万円ほどの錠剤を購入し服用していたという。男性は「死ぬかもしれないと聞いたが、目に入るのはステロイドを使った人のかっこいい体だった。良い体を持つというのは財産の一部だと思う」などコメント。トレーナーの勧めでステロイドなどを服用し始めた男性、しかし2週間ほど経過したころ異変を感じたという。男性は「短期ですごく怒りっぽくなった。エレベーターを待つのも腹立たしくなった」などコメント。その後、ホルモンのバランスが崩れて胸が膨らむ女性化乳房や抜け毛に悩まされ、錠剤の使用を止めたという。フィットネス業界に詳しい専門家は筋肉増強剤がまん延する背景には韓国特有の競争社会の厳しさがあると指摘する。