国内のモータースポーツシーズンが開幕し、先陣を切って行われたのが「スーパー耐久」である。最長24時間で走行距離を競うこのレースは市販車や最新のスーパーカーが順位を争うクラスがある一方、走る実験室と呼ばれる特別なクラスがある。それは「ST-Qクラス」でここでは水素エンジン車を始めとした技術開発が行われてきた。今回トヨタが開幕戦に持ち込んだのは「GR Yaris DAT Racing Concept」。ミッション操作のいらないオートマチックの車でありながらマニュアル車以上の速さを目指すDAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)となっている。DATは2年前から市販車にも搭載されその性能をスーパー耐久でも磨き続けている。さらにこのチームが行うのは技術開発だけではなくタイ出身のミーリット ンガームスッティさんは日本の技術を学ぶため去年来日し現在はチームの一員としてこの車のセッティングの一部を任されている。次の技術を作るだけではなく“人材育成”も行う「ST-Qクラス」にはそんな役割もあった。そしてチームが迎えた今シーズンの開幕戦でスタートを任されたのは去年のスーパーGTでチャンピオンとなった国内屈指のドライバー・山下健太。山下が操るマシンは他のマシンに混ざりながら順調に周回を重ねていく。次に乗るドライバーはDAT開発のきっかけを作った豊田章男会長で今回はドライバー“MORIZO”として自らステアリングを握る。プロドライバーではないMORIZOさんの走りもスムーズであり、ミッション操作がないことで運転に集中できるこの車で走るたびにベストタイムを更新していく。しかしレース中盤の残り2時間になった時、モニターに映し出されたのはコース上でストップしたマシンであった。エンジントラブルが発生し今回はリタイアとなってしまった。レースが終わっても開発は終わらないという積み重ねは車の進化へとつながっていく。
