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「ニューヨーク・タイムズ」 のテレビ露出情報

王国を失い、数千年にわたって世界各地に離散することになったユダヤ人。彼らを支えていたのは、「いつか約束の地に戻れる」という希望だった。ユダヤ人の信仰するユダヤ教はキリスト教社会のヨーロッパでは異質なものと見做され、度重なる迫害を受けてきた。19世紀末の帝政ロシアでは市民の不満をユダヤ人迫害によって解消すべく集団虐殺が行われ、数十万人が死亡する。この大弾圧が引き金となり、ユダヤ人たちは自らの国家を作るための運動、「シオニズム運動」を始めた。ユダヤ系財閥のロスチャイルド家から資金援助を受けたユダヤ人たちは、パレスチナの土地を買って農地を開拓し、入植を開始。当時のパレスチナにはアラブ人が先に住んでいたが、ユダヤ人たちは彼らと共存しながらできたばかりの街「テルアビブ」で慎ましやかな生活を送っていた。
しかし、1914年に勃発した第一次世界大戦によってユダヤ人とアラブ人の共存関係は崩壊することになった。パレスチナを有するオスマン帝国はドイツ、オーストリア=ハンガリーと共に中央同盟国を結成し、イギリスほか連合国陣営と敵対。イギリスは莫大な戦費を賄うためにユダヤ人の力を借りることを目論み、ユダヤ系財閥・ロスチャイルド家から戦費の提供を受けることに成功。その見返りとしてイギリスはパレスチナにユダヤ人の国を作ることを認めると宣言した。この宣言を聞いたユダヤ人たちは武器を手に立ち上がり、イギリス軍に加入。その中には若き伍長、ダビッド・ベングリオンの姿もあった。国家建設の夢に燃えるユダヤ人たちは戦場で目覚ましい活躍を見せたが、その裏でイギリスはアラブ人にも国家建設を認めると約束していた。この二枚舌外交こそが、現在に続く対立の火種となる。
アラブ人とユダヤ人の協力によってイギリスは大戦に勝利したが、国家建設の約束は双方とも反故にされた。パレスチナはイギリスの委任統治領となり、失望したユダヤ人たちは自力での国家建設を決断。移民を募って開拓を進め、既成事実を積み上げることで建国を果たそうと懸命に働いた。こうしたユダヤ人たちの懸命な開拓により、砂漠だったテルアビブは都市へと生まれ変わった。
だが、1930年代に入ると歴史上最大の悲劇がユダヤ人を襲った。「ユダヤ人の民族的絶滅」を掲げるアドルフ・ヒトラーがドイツの指導者となり、実に600万人のユダヤ人が虐殺されたのである。虐殺を生き延びたユダヤ人たちはヨーロッパからパレスチナに逃れようとしたが、イギリスはアラブ人の反発を恐れてユダヤ人のパレスチナ移住を制限する政策を展開。行き場を失ったユダヤ人たちは難民として収容所に送り込まれた。ユダヤ人のリーダーとなっていたベングリオンは苦難に直面する同胞を救うため、国家建設を繰り返し主張。手に負えなくなったイギリスはパレスチナの委任統治を放棄し、解決を委ねられた国連はアラブ人とユダヤ人でパレスチナを分割する案を提示する。しかし、この案は人口の少ないユダヤ人にパレスチナの土地の半分以上を与えるユダヤ人びいきの代物だった。アラブ人はこの案に猛反対したが、自国民にユダヤ人を数多く抱えるアメリカやユダヤ人からの融資を受けた各国は相次いで賛成を表明。こうしてユダヤ人有利な条件でのパレスチナ分割が国連で採択され、1948年5月14日にユダヤ人国家「イスラエル」が誕生する。悲願を達成したユダヤ人たちは狂喜に浮かれたが、初代首相に就任したベングリオンだけはこの後に起こり得る悲劇を予期し、沈痛な表情を浮かべていた。
ベングリオンの予測は即座に現実のものとなった。イスラエル建国のその日、エジプトを始めとするアラブ系の周辺諸国がイスラエルへと侵攻し、第一次中東戦争が勃発したのである。建国間もないイスラエルは多勢を誇るアラブ軍に圧倒されたが、事態を予期していたベングリオンが世界中から密輸していた武器によってイスラエル軍は反撃に成功。第一次中東戦争に勝利したイスラエルは領土をさらに拡大し、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を除くパレスチナ全土を国土とした。
国土を拡大したイスラエルは1950年に「帰還法」を制定し、世界中に散らばったユダヤ人に移住を呼びかけた。これによりイスラエルの人口は15年で倍増し、増えた人口を養うために新たな水路の建設も行われた。だが、この水路は同じ水源を利用していたアラブ諸国にとっては受け入れられない代物だった。水源を巡ってイスラエルとアラブ諸国の対立が深まる中、エジプトは1967年5月にイスラエル南部のアカバ湾を封鎖し物流を遮断。アラブ諸国との開戦が秒読みとなる中、空軍の規模で大きく劣っていたイスラエルは参謀総長であったイツハク・ラビンの奇襲攻撃案を実行。こうして開戦した第三次中東戦争でイスラエルは大勝利を収め、6日間で戦闘を終了させる。ヨルダン川西岸地区を制圧したイスラエルはユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」を手にすることになり、その立役者であるラビンは国民的な英雄となった。
イスラエルが勝利によって領土を拡大する度に、自らの家を追われるアラブ人たちも増えていった。土地を追われたアラブ人たちはユダヤ人に憎悪を向けるようになり、1960年代には彼らを率いるリーダーとしてパレスチナ解放機構、PLOの議長であるヤセル・アラファトが台頭した。志願兵を募って武装ゲリラを組織したアラファトはパレスチナへの帰還を果たすべく武力闘争を展開。他の組織もテロ攻撃によって国際社会に怒りを表明する道を選び、1970年にはPFLPが4機の旅客機を同時にハイジャックし爆破。その2年後にはミュンヘンオリンピックに出場していたイスラエル選手団がブラックセプテンバーによって襲撃され、11人が犠牲となった。
こうしたパレスチナゲリラとの戦いが激化する中、目覚ましい活躍を見せていた1人の兵士がいた。特殊部隊員であった兄、ヨナタン・ネタニヤフの背中を追い、自らも特殊部隊員となったベンヤミン・ネタニヤフである。兄弟がパレスチナゲリラとの戦いを続けていた1976年6月、ユダヤ人が数多く搭乗する飛行機がハイジャックされるという事件が発生する。首相となっていたのはかつての英雄、イツハク・ラビンで、ラビンはヨナタンが所属する特殊部隊に困難極まりない人質奪還作戦を命令。部隊は見事に作戦を成功させたが、ヨナタンは敵の銃撃により帰らぬ人となる。尊敬する兄の死はネタニヤフを大きく失望させ、同時にパレスチナゲリラへの憎悪を掻き立てた。
パレスチナゲリラとの戦いの一方で、1970年代から1980年代にかけてイスラエルは著しい経済成長を果たした。豊富な資金と400万人を超える人口、そして巨大な軍需工場とアメリカから提供された最新兵器によってイスラエルは世界有数の軍事大国の座をを駆け上がっていく。しかし、1987年にガザ地区で始まった市民の抗議活動「インティファーダ」を契機に、国際世論は大きくアラブ側に傾いていく。武器を持たずに石を投げて抵抗するアラブ人を銃で制圧するイスラエルの姿は世界中に報道され、国際社会は「歴史的に被害者だったユダヤ人が加害者に変わった」と痛烈な批判を展開。アラブ人が組織したイスラム教の慈善団体「ハマス」の支援によりインティファーダは長期戦となり、現場のイスラエル軍兵士にも動揺が広がっていった。
アラブ人とユダヤ人の間で憎しみの連鎖が続く中、1993年9月13日に両者は和解を求めて歴史的な会談を行った。イスラエルとPLOの双方が互いの存在を承認し、パレスチナが暫定自治政府を作ること承認するとした「オスロ合意」の締結である。調印を行ったPLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相は互いに握手を交わしたが、その平和も長くは続かなかった。1995年11月4日、ラビンは和平に反対するユダヤ人の若者によって暗殺され、右派政党の党首となっていたネタニヤフがラビンに変わる首相としてイスラエルを導くことになる。
アラブ人とユダヤ人の間で再び憎悪の炎が燃え上がる中、2023年10月に始まった戦闘ではガザ地区で民間人を含む3万人が犠牲となった。イスラエル軍の攻撃は国際社会からはジェノサイドだとして批判が寄せられ、国内からも停戦を求める声が上がっているが、首相としてイスラエルを率いるネタニヤフは未だその手を止めようとはしていない。
幾多のユダヤ人を導き、砂漠の地に悲願の建国を果たした男、ダビッド・ベングリオン。彼は自らが作り上げた国家について、こう語っている。「もし武力が存在しなかったら、イスラエルは地図から抹消され、国民は殺されていただろう。我々は危険が続く限り、戦いを続けるしかない。しかし同時に、自らに問いかけなければならない。戦いの脅威に耐え続けることができるのか、その先に我々が生存していく道はあるのか、と」。

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